アルティジャーノが生んだ照明の傑作FLOS/ARCO(アルコ)

職人の気概を持ったデザイナー、カスティリオーニ兄弟

20世紀のイタリアを代表する建築家・デザイナーであると同時に、とりわけ照明の分野において世界的名声を博してきた二人の人物、それがピエール・ジャコモとアキッレのカスティリオーニ兄弟です。

 

二人は長兄のリビオと共にイタリアのミラノ工科大学建築学科を卒業した後に建築家・デザイナーとしてのキャリアを歩み始めますが、リビオが独立した後は二人での活動となり、1962年にFLOS社が設立されるとデザイン責任者として招聘されて照明の分野での活躍が目立つようになりました。

 

彼らのデザインは、日常生活からヒントを得たアイデアを基に、できる限り身近にある普通の素材を使用し、(機能・デザインいずれにおいても)必要最小限の素材で最大の効果を発揮できるように工夫されているのが大きな特徴です。

 

数々の素晴らしい業績にも関わらず「作ったデザイナーの名前など知らなくても、昔から存在していたかのように普通の家庭でごく自然に使ってもらえると嬉しい(アキッレ)」と謙虚に語る態度は、生涯に渡ってひたすら優れたモノ作りに邁進した姿勢と相まって、デザイナーというよりも尊敬すべき「アルティジャーノ(職人)」と呼ぶ方がふさわしいのかも知れません。

 

兄弟は、ジャスパー=モリソンやマイケル=アナスタシアデス、コンスタンティン=グルチッチといった著名デザイナー達からも慕われ尊敬されていたことが知られていますが、それもこうしたスタイルゆえだったのでしょう。

ピエール・ジャコモとアキッレのカスティリオーニ兄弟

ARCOに込められた職人魂

そんなカスティリオーニ兄弟の最高傑作の一つが、1962年に発表された照明=ARCO(アルコ)です。

 

「天井に穴を開けなくてもダイニングテーブルを美しく照らす照明を作れないか」と考えていた二人が、街燈を見て思いついたのがARCO独特のアーチを描いたようなスタイル。

 

ベースには、イタリアのカッラーラ地方で豊富に採取される大理石を使用して全ての機能を支えて安定させており、ベースの大理石はオブジェとしての役割も果たしています。

 

この大理石部分には丸い穴が開いていますが、ここにはアーチ部分を支えるネジが隠されていると同時に、必要とあれば棒を差し込んで二人で簡単に移動させられるように工夫されているのはちょっとした驚きです。

 

ベースの大理石から先端の照明部分までは直線にして2m20cmもあるのですが、実はこれにも大きな意味があります。

ヨーロッパ・特にイタリアで食事と言えば皆で大いに楽しむもの。

時には食事の最中に移動しながら互いに杯を交わし、家族や友人との絆を確かめ合うものでもあり、ARCOを使用していても、テーブルで食事をしている人の後ろを誰かが自由に通ることができる動線が確保されているのです。

ARCOはイタリア語で「アーチ」の意味

大理石部分の丸い穴

機能美が持つ普遍性

ARCOには、シンプルな形状の中にまだまだ多くの機能性が盛り込まれており、それがまた同時に優れた機能美を演出しています。

 

アーチ部分は3つに折り畳んでコンパクトにできますし、シェード部分の高さを調節することができるようにもなっています。

照明部分の天井には放熱のための穴が開いているのですが、それがまた魅力的なデザインともなっているのです。

 

傑作照明=ARCOは発表当時から優れた機能美が話題を呼び、50年以上が経過した今もなおほとんどデザインを変えることなく、評価の高い照明として世界中で愛され続けています。

 

世界的デザイナーでありアルティジャーノでもあったカスティリオーニ兄弟の「匠の技」から生まれた真の機能美だからこそ、時代を超えて魅力が色褪せないのではないでしょうか。

FLOS JAPAN

FLOS JAPAN ホームページ

http://japan.flos.com/archives/consumer/arco

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