木から選ぶ家づくり天竜/月齢伐採木

月の満ち欠けと時が育む国産無垢材

やさしい手触り、すがすがしい香り、そしてしなやかな強さ。

いつの時代にも木の家が愛されるのは、住む人の五感を和らげてくれるから。そんな木の家のための国産無垢材が静岡にあります。

 

静岡県の最北端にある浜松市天竜区で育つ杉とヒノキの「天竜材」。温かく雪の少ない天竜で伸びやかに育った木々は、まっすぐで曲がりや節の少ない指折りの国産材のひとつです。

 

ここで行われているのは、月の満ち欠けに合わせた「月齢伐採」と「葉枯らし天然乾燥」による材づくり。手間と時間をかける昔ながらの手法を用いることで、強く美しい木材が生まれます。

冬期の月齢伐採 ― “木材の旬”に伐採する理由

「木の伐採には旬があるんです」という天竜T.S.ドライシステム協同組合の榊原康久さん。“木材の旬”とは、木に水分と養分(デンプン)が少ない時期のこと。多量の水分とデンプンは、カビや腐食、狂いや割れの原因となるためです。

 

第1の旬は、9月から2月にかけての冬期。第2の旬は、満月を過ぎて新月までの新月期です。つまり、旬とは冬期の新月期。その時期に伐採を行うことで、カビや腐食に強い良質な木材となるのです。「これは昔からの林業で言われてきたことです。伊勢神宮の式年遷宮でも、新月の2日前に伐採された木材が使用されているんですよ」。(榊原さん)

葉枯らし天然乾燥で生まれる“生きた木材”

長期の天然乾燥も、木材をより強く美しく磨きあげる大切なプロセス。

杉は3カ月ほど伐採場所で葉を落とさずに「葉枯らし」を行います。葉の蒸散作用ですばやく水分を抜くだけでなく、その間にデンプンが天然のフェノール成分(カビや腐朽菌を寄せ付けない成分)に変わり、さらに強い木へと変化していきます。

 

その後、山から降ろして製材。さらに最低1年間じっくり乾燥させます。バーコードなどでトレーサビリティ管理されたすべての材は、伐採から出荷までなんと最短で2年。10年以上寝かせることもあるのだそう。

 

「天然乾燥が木の細胞を生かす」と同組合の森下幸司さんはいいます。高温の人工乾燥は、杉の油分を排出させて細胞を痛めます。一方、天然乾燥は油分が保たれるため、美しい色ツヤとすがすがしい香り、そして強い粘りとしなりを備えた“生きた木材”となるのです。

 

木の家は、その香りによって住む人のストレスを軽減させるのだとか。「よく眠れるようになったと言われますよ。飼い猫が元気になったという話も聞きましたね。杉の家に住んでも花粉症にはならないので安心してください」と森下さんは笑います。“生きている木材”ならではの効果といえるでしょう。

国産杉を使うことが山を守ることにつながる

同組合が目指すものは「山を豊かにすること」。国産杉が利用されることで山が活性化して潤い、ひいては海までも豊かになっていく。つまり、国産杉を使うことは環境の破壊ではなく改善へとつながるといいます。

 

もっと山や木を知ってほしいと、植林や伐採のツアーも企画。

「見学はもちろん、家を建築したいなら建築家や工務店もご紹介します。伐採してもらった木で家づくりもできますよ」と榊原さん。適正価格で材を届けるため、流通経路にも工夫を凝らします。

 

大切に育てた木を、最高の木材へと仕上げることにとことんこだわった天竜の「月齢伐採木」。木の香りに包まれて穏やかに暮らす―。そんな夢の住まいを叶えてくれそうです。

取材後記

国産材を使うことで豊かな山と海が保たれる、というお話に認識を新たに。「山を守り続けたい」という強い思いに触れ、もっと日本の山と木について知りたくなりました。

(取材:永井)

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