指物師益田 大祐さん

プロダクトデザインから指物の世界へ

親から子へ、世襲が一般的な伝統工芸の世界にあって、益田さんの経歴は異色です。

学生時代はプロダクトデザインを専攻し、家具製作会社に就職した後「トータルで関われるモノ作りがしたい」と指物の世界に飛び込みました。

親方の下での修行を経て独立後は日本文化に対する興味関心を高めて勉強を重ね、学んだ知識をモノ作りに活かすことで、中村芝翫丈など歌舞伎役者の道具作りを任されたり、建築家とのコラボで茶室製作に取り組むなど多方面で活躍しています。

指物技術を活かしたプロダクト製作をめざして

プロダクトデザインを学び、家具製作から指物の世界に入った益田さんは、今、ベクトルの向きを変えるかのように、指物技術を活かしたモノ(プロダクト)創りをめざしています。

釘などの金具を一切使わずに精密な加工で組み立てる指物という技術を活かすことで、より多くの人を魅了するモノ(プロダクト)を創造したいと考えているのです。

伝統に磨かれた精緻な技と現代のデザインや発想が融合することで、新しいジャンルを創り出したい、それが益田さんの想いです。

世界へも発信

昨年、ミラノの家具見本市で4日間の実演を行ったことは大きな刺激になったと言います。

日本と異なり、出展者同士が自由闊達に情報交換して新しいモノを生み出そうとする意欲が高く、来場者からも次々と質問や意見が寄せられました。

日本では「伝統工芸」という目で見られがちな指物が、ミラノでは金物を一切使わずに道具を製作する「技術」として捉えられ、海外のデザイナーや製作者が大きな関心を寄せてくれたことに、ワクワクするような想いになったそうです。

ツールだからこそ、広がりがある

高貴な人々に向けた家具などが主流だった京指物に比べて、江戸の指物は庶民に使われてきた歴史があります。

特に、歌舞伎役者や商人など移動することが多い人たちに向けて、持ち運びができるようにコンパクトで使い勝手のいい道具が数多く作られてきました。

ツールとしての指物道具ですから「もっといろんな幅やスタイルがあっていい(益田氏)」わけで、国内外のデザイナーとのコラボでおもしろいことができるだろう、という確信が生まれる理由でもあります。

既に、指揮者のタクトを入れるケースや葉巻ケースなど、指物技術を新しい用途に応用した作品が次々と生まれています。

本質さえ変えなければ、いつでも戻れる

建築家とのコラボで、スーツケースに入れて持ち運びできる茶室を作るなど、多方面に活躍している益田さん。

注目されることがなければ後継者も入ってこないし、業界の発展もない。

本質をしっかりと押さえていれば、どんどん広がってもいいし、いつでも元へ戻ることもできる。

革新が行われてこそ伝統が継続される、という信念の下、若手指物師としての益田さんはますます新しいことに挑戦しようとしています。

取材後記

若手指物師・若手伝統工芸者という目で見られがちな益田さんですが、あくまでも指物という技術を使って現代に通用するプロダクトを創造しようという気概あふれる発言に感銘を受けました。

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