環境設備エンジニア荻原 廣高さん

見えない環境に魅せられて

古来日本人は、家屋に明かり障子や襖を使うことで、優しい光を室内に取り込み、時に開け放して室内に風を巡らせるなど、光や風を生活空間の一部として取り入れてきました。

 

「光や風を使い、建築にどのような環境を創るか」を計画する専門家・荻原廣高さんが今の仕事を志したのは、建築学科の学生だった頃に和辻哲郎の「風土」や谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」などを読んで「カタチに現れない光や風を設計してみたい」と思ったのがきっかけです。

 

環境エンジニアリングで世界トップレベルにあるイギリス・ARUP社で活躍することとなった荻原さんは、一緒に仕事もしていた建築家レンゾ・ピアノが伝えた「空間は、壁や仕切りや天井の組み合わせとして在るのではなく、空気や光や音のような、触れることのできない要素によってつくられるものである」の言葉に刺激を受け、自らの想いを一層強くします。

光と風を絵で分かりやすく解説(環境ダイヤグラムスケッチ)

風の流れを図示する(色の違いが風の強さを示す)

いごこちの良さを追求するのが仕事

コンピュータ解析などを通して建物内外の光や風を分析し、建築家と共に最適な環境を提案するのが荻原さんの仕事。

 

太田市美術館・図書館の設計では、イベントや開架スペースとして使われるスロープでは積極的に光や風が交わる開放的な空間とする一方で、ブラウジングや展示に使われる空間では穏やかな風と落ち着いた明るさに包まれるように設計するなど、常に「いごこちの良さ」を徹底的に追及しています。

 

この分野では最先端にいる荻原さんですが、決してデータだけに頼ることなく、実際に建物を使う人たちとのコミュニケーションを大切にしています。

荻原 廣高さん

計測器は常に持ち歩いている

デジタルとアナログの融合で最適環境を創り出す

太田市美術館・図書館では、建築家・平田晃久さんと共に市民とのワークショップを実施し、何度も意見交換をして設計に反映するなど「開かれた建築設計プロセス」を推進したのですが、その際、市民の方々にも「見えない風」を理解しやすいように、誰でも使えるスマホアプリ「Wind Tunnel」を使ってその場でシミュレーションし、屋内を流れる風とレイアウトの関係を一緒に考えました。また普段から、CGだけでなく手描き図面や模型を使って分かりやすく暖かみのある説明を心がけるなど、カタチのない風と光を建築の一部だと実感してもらうための工夫を重ねています。

 

「いごこちというのは数字で割り切れるものではなく、人々の微妙な感覚が大切ですし、そういうものを感じ取って伝えることが大事だと思っています(荻原氏)」

 

和辻哲郎や谷崎潤一郎の世界に触発されて世界最先端の環境設備エンジニアとなった荻原さんは、デジタルとアナログを融合させて光と風を設計することで、人々の「いごこち」を追求しているのです。

 

アラップジャパン

https://www.arup.com/offices/japan

施設を使う市民と共にワークショップを実施

取材後記

仕事が好きでたまらない・・・そんな方と話をしているとこちらまで熱くなります。

荻原さんは正にそんな方でした。

仕事を説明して頂く時の熱のこもった話しぶりが「本当に仕事に誇りを持っておられるのだなあ」と感じさせられた取材でした。 (取材:上野)

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