伝統建築技法「石場建て」大工杣耕社 山本 耕平さん

日本の伝統建築技法に魅せられて

「先人の知恵」という言葉があります。

 

夏は高温多湿・冬は寒冷乾燥という真逆の気候サイクルに加え、何よりも地震の多い日本は建物に厳しい環境であり、それだけに古来幾多の工夫がなされ、優れた建築技術は時代を超えて継承されてきました。

 石の上に柱を乗せるだけで礎石と土台を固定しない「石場建て」も、千数百年の時を経て現代に受け継がれてきた優れた建築技法の一つです。

 石場建ての最大の利点は「地震に強い」ことです。

大地震の際には、石の上で柱がずれることで揺れを吸収し、建物への被害を「散らす」役割をします。

防災科学技術研究所(E-ディフェンス)が、実物大の石場建て住宅に巨大地震の揺れを与えた実験はYouTubeでも見ることができますが、見事に揺れを吸収して建物は無傷です。

 「通気性に優れている」ことも大きなメリットです。

昔から、高温多湿の夏は建物を傷める大きな原因になってきましたが、通気性が確保されている石場建ては防腐性に優れ、住まいの寿命を大きく伸ばしてくれるのです。

 そんな石場建てに惚れ込み、岡山を中心に数多くの建物で実践しているのが杣耕社の山本耕平さんです。

山本 耕平さん

何よりもやっていて面白い

宮大工として仕事人生をスタートさせ「木造建築と言えば石場建てが当然」という環境で修行していた山本さんは、独立して一般住宅を手がけるようになって「石場建て住宅が極めて少なくなっている」ことに驚きます。

現代建築に比べて多少コストがかかることが大きな理由であり、ビジネスだけを考えれば石場建てを封印することもできたのでしょうが「自分自身が信じられることに取り組みたいし、何よりもやっていて面白い」と、ずっと石場建て建築に取り組んできました。

 

 

元々宮大工として厳しく鍛えられている上に山本さん自身の優れた感性もあって、石場建てはもちろん、伝統建築で磨かれた数々の優れた技法を活かした丁寧で美しい仕事ぶりは、建物を依頼した施主や建築家の間で評判となり、今では口コミだけで県外からも次々と仕事が舞い込むようになっています。

 

石場建ての世界では名の知れた存在になった山本さんですが、決して「こうあるべきだ」といったこだわりを持つ昔気質一辺倒の職人ではありません。

「自分の独りよがりで細かいところにこだわり過ぎるのは良いことだとは思いません。施主さんには予算もありますから、その中できちんとメリハリをつけてあげることが大事だと思っています」

高価と思われている「石場建て」などの伝統技法を、一般的な現代住宅で使えるようにと工夫しているのも、山本さんが評価されている理由でしょう。

紡がれる、そして進化する伝統技法

山本さんにはアメリカ人のお弟子さんがいます。

日本の伝統建築を研究していたジョナサン・ストーレンマイヤーさんが、山本さんの石場建て技術に惚れ込んで「これぞ天職」とばかりに押しかけ弟子になったのが3年前。

今や山本さんに代わって棟梁として現場を仕切るまでになっています。

 

さらに、ストーレンマイヤーさんに感化されたアメリカ人青年が近々新たな弟子になる予定とのことで、日本の伝統建築技法が外国人によって継承されていくのは何やら不思議な気がします。

 

山本さんは「日本の伝統建築も、元は海外から伝来したものが日本固有の文化と融合してきた訳ですから、日本人とは異なるセンスを持った彼らによって日本の伝統技法がどう解釈されるのかを見るのは楽しみですし、勉強にもなるんですよ」と語ります。

 

日米両国の匠たちによって、日本の伝統技法「石場建て」が紡がれていく様子を、ぜひ改めて取材させて頂きたいとお願いして今回の訪問を終えました。

 

杣耕社

http://www.somacousha.com/

取材後記

お会いする前は「正統派職人気質の方ではないだろうか」と想像していたのですが、実際の山本さんは実に穏やかで丁寧にお話をされる方でした。

「伝統技法を守る!」といった肩肘を張ることもなく「楽しいからやっているんですよ」と言う穏やかな笑顔が素敵でした。 (取材:上野)

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