塗装職人小野 光一さん・和夫さん

仕事も趣味も一番をめざす

昭和の中頃まで「優れた職人は仕事も趣味も超一流である」と言われていたそうです。

 

やると決めたら徹底的にのめりこむ性格こそが職人気質であり、仕事も趣味も始めた以上は超一流の域まで極めるのを信条とする。

だからこそ「職人は粋を体現する」と称されたのです。

 

小野光一さんは、平成に生きる「粋を体現する」職人です。

 

数多くの建築家・施主から高い評価を受けている塗装の仕事に加えて、趣味の世界ではルアーフィッシングやバンド・旅行・ボランティアと多方面に活動の場を広げています。

 

中でもルアーフィッシングはプロ級の腕前を誇り、プロも参加する大会で何度も優勝して専門誌に掲載される有名人ですし、ピアノとギターを担当する音楽活動では、かつて楽器プロデュースをしていたこともあると言いますから、やることの一つ一つが趣味の域を超えています。

 

仕事でも趣味でも「やるからには一番をめざしていかないと」が口癖の小野さんは、同時に「仕事も趣味も徹底的にやることで相乗効果が生まれることも多いですよ」と語ります。

 

釣り好きの小説家・醍醐麻沙夫は「魚を釣りたい一心が、魚以外の実に多くのものに私を逢わせてくれる」と言いましたが、ルアーフィッシングで得た人脈が仕事に活きることも少なからずあるそうです。

店舗のカウンター(木部・鉄部を塗装)

小野 光一さん・和夫さん兄弟(現場にて)

愛艇で釣りに向かう光一さん

ライブハウスで演奏する光一さん

常に高みをめざす

小野さんが塗装職人として独立したのは27歳の頃。

塗装業をしていた叔父の下で働いていた小野さんに、顧客の一人だった工務店の社長が腕を見込んで独立資金を出して応援してくれたのがきっかけです。

 

最初の一年こそ「仕事がほとんどなかった」そうですが、勉強熱心で丁寧な仕事ぶりが評判を呼んで、二年目以降は紹介・紹介で仕事がどんどん増えていき、弟さんや従兄弟にも参加してもらうまでになりました。

 

順調に経験を積む中で「塗装屋としての将来」を模索していた小野さんは、いつしか「もっと難しい仕事にチャレンジしていくべきではないか」と考えるようになって、建築家の仕事を積極的に受けるようになります。

 

元々のめりこむ性格だけに、建築家に負けない知識を仕入れようと塗装材料や古今の施工方法などを徹底的に研究しては実践を繰り返していくうちに、いつしか数多くの建築家から「塗装のことなら小野さんに相談してみよう」と言われるまでになりました。

 

研究熱心な性格は、建築家の感性や施主の想いを理解するために、インテリアで有名なレストランや優れた建築物を訪れては塗装のヒントを得ようとするなど、現場以外でも研鑽を積もうと心掛けているところにも表れています。

 

塗装屋さんと言えば、塗料だらけの作業着で現場にやってくるのが一般的ですが、小野さんはきちんとした服で来て、現場で作業着に着替えます。

「現場に到着した際に施主さんがおられても失礼のないように」との想いからですが、「心構えが一流でなければ、技術も一流にはならない」ことを経験的に熟知しているからこその心遣いに、粋な職人気質が忍ばれます。

国分寺の家 壁面塗装

町屋の家 玄関塗装

素晴らしい仕事の陰に「兄弟のコラボ」がある

興味関心の幅が広く外交的な光一さんに比べて、弟の和夫さんは寡黙に目の前の仕事に真っ直ぐに向き合うタイプです。

 

現場では他の職人さん達との調整など細かな気配りが欠かせませんが、そうした事を正確かつ誠実に一つ一つ対応していく和夫さんの存在は周囲からも高く評価されています。

 

「難しい現場でも仕事がスムーズに進むよう細かいフォローをしてくれますし、弟がいなければ、私自身も塗装の仕事でここまでになることは絶対にできなかったと思っています」

 

タイプの異なる兄弟による絶妙のコラボが、優れた仕事を生み出す原動力ともなっているのでしょう。

柏の家(ちょっとエイジング中)

塗装中は完全装備で(和夫さん)

“創る”楽しさを

住宅の仕事に関わる際には、施主や施主の家族に対して「(塗り方を)教えますから、少しだけ一緒に塗ってみませんか」と声をかけることがあるそうです。

 

家創りの一部にでも施主が参加することで「家に対する愛着が湧くので、後々まですごく大事にして頂けるんです。その方が施主さんも家も幸せですよね」というのがその理由。

 

「施主さんが嬉しそうに塗装しているのを見ると、自分まで幸せな気分になりますね」と語る小野さん。

そんな小野さんと一緒に自宅の塗装に参加して「創る楽しさ」を味わうことのできる施主さんが、何だか少しうらやましくなりました。

勝浦の家 外壁塗装

多摩の家 外壁塗装

取材後記

「仕事も趣味も超一流」と聞くと、何となく昔気質の頑固な職人像を想像するかも知れませんが、お会いすると見事に裏切られます。

仕事や趣味について熱く語りながらも気さくで笑顔を絶やさない話しぶりは聞く人を惹きつけ、つくづく「こんな生き方をしてみたいなあ」と感じさせる素敵な方でした。 (取材:上野)

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