プロの住宅レシピ
■ 「光に従う家づくり」で叶える、敷地条件を活かす心地よい暮らし
中庭のある平屋の住まい。南側にはお施主様のご実家が建っており、光を取り込むことが難しく、敷地にどうやって光を取り込むかが課題でした。
そこで「光に従う建築」として、太陽の動きに合わせて住まいのボリュームや開口の位置を決定し、日々の暮らしの中に自然な明るさを取り込む住まいを目指しました。
中庭を持つ住宅では、外部からの視線を遮るように壁で囲むのが一般的です。しかしこの住まいでは、独立性を保ちながらも部分的に開いたり、透かしたりすることで、光を取り入れ、風や視線が抜ける部分を設けました。
透かす工夫として採用したのが、ルーバーです。住まいのある石川県金沢市のこの地域では、昔から外部と内部との関係性を丁寧に扱う知恵として「格子」が用いられてきました。伝統的な要素を現代的に昇華させたルーバーを中庭に設けることで、敷地内からは空が抜けて見えますが、外からはほとんど見えません。
また、ご実家が隣接するという特異性を活かし、中庭から見える実家の白い外壁や、聞こえてくる生活音など、間接的に関係し合う距離感を住まいの一部に取り込んでいます。
さらに、インナーガレージから玄関までを屋根でつなぎ、北陸ならではの雨や雪の多い気候にも配慮。動線や面積の効率にも優れた計画となっています。
中庭からつながるリビングとダイニングでは、ダイニングテーブルやソファを移動させ、フレキシブルに使えるよう空間の大きさや間取りを計画しました。
季節や気分、生活のリズムに合わせて空間を着せ替えることができます。どこに座っても中庭が美しく切り取られる窓のデザインと、部屋の奥まで光が届く窓の高さや位置の設計で、心地よく過ごせます。
「こうしたいからこうする」のではなく、すべては光に従って住まいを形づくったことで、暗くなりがちな敷地でも明るく心地よく過ごせる住まいとなりました。