床と光の家

作品紹介

夫婦と子供の3人家族の住まいである。敷地は、千葉県八千代市のニュータウンの一角。最近まで畑や林などが残っていた地域で、周囲はまだ更地が広がる。
夫は家全体がワンルームのように繋がり光に溢れた住まいを望み、妻は収納が多くプライバシーを保つことができる住まいを望んだ。両極端のリクエストを実現するため、立体的なワンルームとすることで地面と空を家の中に取り込み、環境と人とものの関係性を、床の段差によって構築した。

 

1階のほとんどは地面と連続した土間である。土間からコンクリートの基礎を伸ばして腰壁として現し、床高の異なるキッチン・ダイニングとリビングを土間を挟んで配置した。床の段差部を見せる収納として、土間と床の境界がものの居場所となる。土間から階段を8段上がると書斎スペースがあり、将来的には子共の電子ピアノが置かれる。
さらに2段、4段の段差を上がったところにベッドがひとつずつ入る夫と妻の部屋があり、いちばん上の子どもの部屋へと続く。これら6つの床の段差は、5歳の息子にとっては格好の遊び場である。

 

今後周囲に住宅の建つことが予想されるので、開口部は外壁側に多く取らず、ミルフィーユ状に床と床の隙間を光の取り入れ口とし、外壁は、断熱性に優れたポリカーボネート中空板で帯状に覆うこととした。プライバシーを保ちながら、内部まで光が入る。また、人の背よりも高いところに透明なハイサイドライトを帯状に回し、通風と視線の抜けをつくった。
リビングのソファから見上げると、折り重なる床の先に空が見える。高さの異なる6つの木の床とコンクリート土間は、平面的な広さとしてはコンパクトな家の中に、感覚的な距離を生む。これらが生活の中で展開されることで、家族の繋がりが床を媒介として一体となりつつ、のびのびとした広がりを感じさせる住宅とした。

『新建築住宅特集』2021年6月号 掲載

 

Photo : Kai Nakamura

作品データ

所在地: 千葉県

延床面積: 86.57㎡

作品集

物件

■ 床と光の家

夫婦と子供の3人家族の住まいである。敷地は、千葉県八千代市...
物件

■ 代々木のオフィス1・2

新宿駅にほど近い、大都市の中に近接して建つ二棟の小さな...
物件

■ 豊田の家

愛知県豊田市に建つ、夫婦と小学生2人の子どもたちが住む家...
物件

■ 駒込の民泊型ホテル

東京には、昔ながらの個人商店が活気を持つ商店街が残ってい...
物件

■ 目黒八雲の長屋

東京・目黒の閑静な住宅街の旗竿敷地に建つ、地下1階・地...