所在地: 新潟県 新発田市
作品紹介
夫婦と子供、3人構成の家族に向けた中庭のある小さな平屋住宅である。
冬季、曇天と降雪が長く続く新潟県新発田市。分譲地である計画地は、車と人通りの多い都市計画道路に面している。
相談初期に現場を視察した際、更地であった計画地周辺は、あっという間に街並みを形成した。決して広くはない敷地の境界際まで寄せた住宅が、屋根付きカーポートと共に軒を連ねる。建物の開口部にはプライバシー確保のため、ほぼすべてのカーテンが常時閉め切られている。
加えて、建物の正面はカーポートの影になる。その表情は、冬季の寒さと薄暗さをじっと耐えているように見えた。利便性の高いカーポートと、経済的に合理的な住宅製品による街並みである。
ふと、こんな問いが浮かんだ。
このような状態にある住宅あるいは日常に、「風土」を感じる機会はあるのだろうか。このエリアで当たり前のように導き出されている住宅の解答に疑問をもった。四季に応じて移ろう光や空模様を感じることができる空間は、どのように実現できるだろうか。
小さな中庭とそれを取り巻く回帰的な空間構成、レイヤーの設えがそれを叶えた。
Photo : 佐藤圭真建築設計事務所