プロの住宅レシピ 日光を遮りながらも明るく!快適に暮らす家づくりの工夫
石塚 和彦
健康上の理由など様々な事情から「室内に直射日光を取り入れたくない」という要望もあります。
「外から窓を見せたくない」「直射日光を入れたくない」というご要望から、この住まいの設計は始まりました。
南側の開口部を絞り込み、自然光の取り込みを最低限にするため、窓外壁面にルーバーを配置し、奥に小さな坪庭を設けました。さらにその奥に窓を設けることで、まず光はルーバーに当たり、壁に反射して間接的にリビングやダイニングへと入ります。直接的な光とは違い、影と光がグラデーションを描くような柔らかな空間となり、カーテンがなくても暮らせるので、開放的な印象さえあります。
この柔らかな光と影が活きるよう、リビングの壁は少し黄色みを帯びた白色で塗装し、梁や木材の家具にはさりげない凹凸をつけるなど、ディテールにもこだわりました。インテリアの影と外壁のルーバーからの光と影が室内で絶妙に組み合わさり、時間の変化とともに様々な表情が生まれます。
外壁には油分が多く、耐水性、耐久性に優れた屋久島地杉を採用しています。屋久島の間伐材を有効活用した木材で、環境に配慮された製品です。塗料には「エコウッドトリートメント」という特別な塗料を使用することで、日光による経年変化でグレーがかった深みのある風合いへと変化し、年月とともに変化する住まいは、住む人にとっても楽しみの一つとなっています。
日光を大きく取り入れなくても、この住まいのように窓の設け方、光の取入れ方の工夫により、閉鎖的にならず快適な暮らしができます。