プロの住宅レシピ 素材感が豊かな、白い平屋の住まい

辻 久・辻 奈穂子
夫婦と愛犬が暮らす白い平屋の住まい。
住まい全体を自由に使い、快適に暮らせるよう、ほとんど壁を持たないワンルームのような一続きにつながる設計。建物は、できるだけ低く抑えた軒と水平ラインを意識したデザインで、外観からも落ち着いた雰囲気を感じさせます。
「白い家を作りたい」というご希望から、「素材感を感じる白」にこだわりました。
壁や天井、建具は白を基調としつつも、異なる素材やテクスチャを組み合わせることで、シンプルでありながら深みのある空間に仕上げています。
例えば、天井や一部の壁に使った杉の野地板は、本来屋根裏などに使われる荒々しい質感の素材。これを白く塗装し、あえて仕上げ材として採用することで、ラフで素朴な印象を生み出し、室内にいながらも外のような雰囲気を感じるデザインになっています。天井高は2.1メートルと低めですが、白い空間だからこそ圧迫感を感じません。
他の壁は、プラスターボードの上から塗装を施し、さらっとした卵の殻のような質感に仕上げました。
さらに、白いタイルやコンクリートの床、無垢材を部分的に取り入れることで、現代的な暮らしの中にクラシックな雰囲気を融合させています。この空間の雰囲気を活かすため、照明器具やエアコンも白いものを選び、空間になじませることでミニマルなデザインを実現しました。
また、室内の随所にガラスの室内窓を設けています。ワンルーム空間でありながらも、集中したいときやこもりたいときには、程よく閉じることが可能。一方で、室内窓を通してお互いの気配を感じることができ、心地よい距離感がを保てます。
白い住まいだからこそ、素材感や建具、ドアなど細部にまでこだわることで、単調にならず、さまざまな質感を楽しめる豊かな住まいとなりました。