プロの住宅レシピ 「余白」が暮らしを育くむ、大空間の平屋

こちらの住まいをつくる上で、お客様のご要望は明確でした。
1、木造でトラス構造の大きな空間。
2、コストを抑えたい。
3、基礎を活かしたコンクリート床。
とにかく「何もない大空間にしたい」ということで、多用途に使えるよう使い方を限定せず、「何かをつくる」というより、空間を「残す」という視点で設計を行いました。
柱をなくしたトラス構造では、三角形を組み合わせることで強度を確保しながら、遮るもののない広々とした空間を生み出しています。 建物全体は大きな筒状の構造体で、その中にぽんと置いた白い箱の中には、お風呂・トイレ・キッチン・寝室といった暮らしの最低限の機能を集約。限られた面積に必要な機能だけを詰め込み、残りはすべて自由に使える、リビングを兼ねたフリースペースとして設計しています。
リビング兼フリースペースでは、趣味や作業にも対応できるよう、換気扇やコンセントの位置にこだわっています。また開けた空間でも快適に過ごせるよう、断熱性能にも配慮し、快適な温熱環境を保ちます。
農地に囲まれた敷地環境を活かし、南側の農地に向けて、大きな開口を設けて外の風景を取り込みました。一方、北側の道路側は、細長いスリット窓も採用し、採光と視線のバランスを調整。環境から導き出された設計で、快適さを高めています。
内装のデザインも、シンプルに徹しました。構造用合板の壁やあらわしのトラス梁など、建物の構造そのものが空間の表情となり、素材の力をそのままインテリアに昇華させました。その中に真っ白な箱を対比的に置くことで、空間全体のコンセプトを際立たせます。
現在、お施主さまご自身で、白い箱の周囲にDIYで部屋をつくっているとのこと。暮らしながら住まいを育てる、「余白」から生まれた暮らしの楽しみ方です。