プロの住宅レシピ 「眺めをつくる」 窓がつなぐ、暮らしの風景

長久保健二設計事務所
長久保 健二

部屋と部屋をつなぐ窓。空間と空間、人と人をやわらかく結ぶリノベーションのアイデアが詰まった住まい。

窓の際を変えることで、遠近法が強調され、より住まいの奥行を感じる。

廊下から見た眺め。和室とその奥のアトリエが望める。

窓が玄関、廊下、和室、アトリエをつないでいる。

都心から少し離れた穏やかな地域。外を眺めているだけでも心落ち着く場所に、「もうひとつ、何か魅力的なものがあると、より暮らしが楽しく、豊かになるのでは?」と考え、窓でつなぐ住まいのリノベーションを提案しました。外に開く窓だけでなく、家の中にも窓を設け、景色をつくり出しています。

打ち合わせ当初は、三部屋に分かれていた和室の壁をすべて取り払い、大きな一室にする案もありましたが、単調な空間になってしまう懸念がありました。そこで、大きなひと空間にしたり、個室として完全に分かるのではなく、小さな部屋同士が窓によってつながる住まいとしました。
通常、窓といえば外部に向けて設けますが、この住まいでは廊下から畳の部屋、その奥のアトリエスペースへと視線が抜けるように窓を設けています。窓に生まれる遠近感を活かし、住まいの中に奥行きや距離感が感じられるよう、窓の大きさを少しずつ変えています。
白い壁の真ん中に開いた窓は、廊下を歩く人の姿をまるで一枚の絵のように切り取ります。日常の何気ない風景を一瞬絵画のなかに閉じ込めます。
窓についた扉を閉じれば個室としてプライベートな時間も楽しめます。

日当たりの良い窓辺には、畳にごろっと横になれるようなラフなスペースを。その奥には、籠り感のある落ち着いたデザインの居間を設けることで、光と影、開放感と静けさといった異なる居心地が住まいの中に生まれ、その時々で心地よい場所で過ごせます。
窓は採光や換気のためや、外の景色を取り込むためのものだけではなく、住まいの内部にも「眺め」を生み出し、日常の中の驚きや喜びに気づかせてくれるものでもあります。そんな窓の魅力を最大限に活かしたリノベーションとなりました。

Photo : 湯原慎一郎

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