プロの住宅レシピ やさしい素材がつなぐ、家族が集う平屋の住まい

刈谷 昌平
静かな住宅街に佇む平屋の住まい。30代のご夫婦と2人のお子さんが暮らすこの家は、家族が心地よく寄り添えるように計画されました。
子どもがのびのびと暮らし、家族が安心して心地よく過ごせる住まいを──そんな希望を軸に採光や素材が丁寧に考えられ、家族が自然と集まれるような構成が生まれました。
住まいの中心にはリビングを配置し、その周囲に寝室や子ども部屋、スタディスペースを連ねることで暮らしの動線が緩やかに交差する計画に。
そして勾配天井で高さを確保したリビングの前にひらかれた土間空間。コンクリート仕上げの土間は庭のような性格を持ち、外と内のあわいとして暮らしに多彩な表情をもたらしています。
子どもたちが遊ぶ様子を室内から眺められるように、視線の抜けと緩やかな遮蔽のバランスも丁寧に設計されています。
素材には、杉の床、ヒノキの柱、和紙貼りの壁を使用。手が触れる場所ほど自然素材の心地よさが生き、調湿性や光の反射によって室内にやわらかな空気を生み出しています。
照明も単に明るさを確保するのではなく、空間ごとに効果を計算した配置により温かな電球色が素材の表情を静かに引き立てているのです。
子供部屋には、将来的な間仕切りにも配慮した大開口の引き戸を採用し、今は一体の空間として機能。
その先にあるスタディスペースはリビングを一望でき、家族との繋がりを感じながら子どもたちの遊びや学びの場として伸びやかに使われています。
家族の成長や暮らしの変化にあわせて可変性を持たせた設計は使いながら育てていく余白があります。
平屋ならではの包容力と住まい全体に通底するやさしい素材感が、日々の営みをそっと支えているのです。