プロの住宅レシピ 家族の絆を深める、暮らしの芯を育むキッチン -隙間の美学-

平野智司計画工房
平野智司
照明 床(タイル) オーダーキッチン

キッチンの最奥にしつらえた、7台のPCモニターを支える白いアーム。 リビングとは趣を変え、家族4人だけで過ごす“プライベートラウンジ”のような空間に。

キッチンとひと続きに広がるリビング。 モノトーンの統一感に、床材の質感と間接照明がやわらかさを添える。 コンクリートの硬質さを纏いながらも、 凛とした温もりが息づく空間です。

アートピースのように設えたオリジナル階段。 コンクリート壁から木の段板が浮かび上がるような造形が、軽やかな浮遊感と美しい抜けを生み、日常の動線に邸宅ならではの上質な景を添えています。

左:玄関アプローチ
右:段差のないフラットな玄関。空間の隙間からこぼれて見える灯りや素材の変化が奥へ奥へと誘う。

外断熱

ガレージ入口の外構は、焼き杉板の木目を型押した木目模様のコンクリート。シンプルな中にひと手間かけた意匠が味になっている。

建築家・平野智司さんは、施設建築、集合住宅から住宅まで35年以上設計を手がけてきました。豊かな経験を持ちながらも「毎回お施主様の高い要望に応えられるか、いまだにプレッシャーを感じます」と語る姿は、誠実で優しい人柄そのものです。平野さんの家づくりは、常に住まい手の暮らしを起点に考えること。

たとえば「奥沢・S-House」は、海外生活の長いご夫婦とお子さま2人のための住まいで、外観のリクエストは「白い箱のようにシンプルに」。ご家族はとにかく仲が良く、自然とキッチンに集まる暮らしを大切にしてきました。キッチンを暮らしの中心に据えた住まい。料理をする奥様のそばで会話を楽しみ、カウンターで軽く食事をし、あるいはそれぞれがPCや本を広げながらも同じ時間を過ごす──。個室に分かれるのではなく、同じ空間で思い思いに過ごせる場所です。まさにご家族が望んだからこそ形になった、唯一無二の住まいといえるでしょう。さらに奥には7台のモニターを備えたラウンジを設え、映画やゲームを家族で楽しむ“贅沢な時間”を演出。

仕上げは白とモノトーンを基調にしたコンクリート打ちっぱなし。快適性を守るため外断熱工法を採用し、「年に一度調律が必要だったピアノが、今ではまったく狂わない」と施主を驚かせるほど、温湿度は安定しています。

平野さんがもう一つ大切にしているのは「隙間の美学」。階段のスリットや壁のずらし方など、光や気配がかすかに抜ける工夫が空間に余韻を生みます。「俗な意味ではなく、建築には色気が必要です」と平野さん。その色気は装飾ではなく隙間に宿り、人を無意識に惹きつけるのです。

階段は単に空間を繋ぐ装置ではなく、人が移動することでドラマを動かす。住まいの隙間が家族の日常に静かなドラマを添える。邸宅は単なる器ではなく、家族の物語を紡ぐ舞台。ふと「ここにいると心地よい」と感じたなら、それは空間が創り出す“上質な余白”があなたの感性にピタリとはまった瞬間かもしれません。

シェアする

採用されている製品

平野智司計画工房
平野智司
ここが私の評価ポイント!
■採用製品:照明フロス ライティングレール
THE TRACKING MAGNET

海外暮らしの長いお施主様で、リビング空間における照明には非常にこだわりがあり施主自身からこの照明が使いたいとご提示されました。

日本製のライティングレールは25㎜が多いのですが、こちらは15㎜で非常にシャープなデザインです。そのほんのわずかな線の細さが洗練された視覚効果をもたらしてくれ、照明シーン(光のつき方)をいくつも記憶することができ、ギミック的な機能があるところも、施主の心を射抜いたようです。

細部へのこだわりがあるぶん、標準的な照明よりお値段が張りますが、照明がついていない時もスッキリしていますので、このお施主様のように暮らしの中心となるメイン空間には妥協せず良いものを、と考える方には向いている照明が揃っているブランドだと思います。
採用製品
タイル|RIVIERA TERRA
リビエラ 株式会社
平野智司計画工房
平野智司
ここが私の評価ポイント!
■採用製品:キッチンの床タイル RIVIERA(リビエラ)
TERRA DESIGN INDUSTRYシリーズ オキサイドライト (SIZE:748×1498)

このO-Houseの事例ではコンクリート打ちっぱなしのモノトーンを基調としたキッチンリビングの空間に対し、お施主様がグレイのタイルが良いというこだわりがありました。 そのご要望に叶う私からの提案として、まず選定するにあたり1番重要視したのがサイズです。 通常ほとんどが最大600サイズくらいのラインアップの中、リビエラさんのタイルはかなり大判サイズが多く、仕上げのテクスチャ―の色が豊富で非常に高級感があり、お施主様も大変気に入って採用に至りました。

建築家好み、というと語弊があるかもしれませんがシンプルな中にクリエイティブセンサーが刺激されるような、非常にセレクトしやすいタイルが豊富にそろっているという印象で、タイルを採用する時には度々どんなものがあるかなと覗いてしまいます。
採用製品
オーダーキッチン
株式会社Madre(マードレ)
平野智司計画工房
平野智司
ここが私の評価ポイント!
■採用製品:オーダーキッチン Madre(マードレ)

キッチンはお施主様とまずお打ち合わせをして、ざっくりコンセプト作り・プランニングした後、お施主様から特別指定がない場合は、まずマードレのSRに一緒に行くことが多いです。
やはりキッチンはキッチンの専門家の方が経験値も知識も豊富で色々と提案してくれるので、お施主様もイメージが掴みやすいです。 どんなタイプのキッチンでも万能に対応してくれますし、社長の山根さんはお施主様の理想のキッチンを作り上げようとする熱意をすごく感じます。
採用製品
平野智司計画工房
平野智司
ここが私の評価ポイント!
■採用製品:バークス環境 フネンダン(外断熱工法)

奥沢・S-Houseではお施主様がモノトーンを基調としたコンクリート打ちっぱなしの内装をご希望でした。通常の住居は建物の中を断熱しますが、理想の内装を叶えた上で快適な住居性を確保する為に、外断熱にしています。
湿式外断熱工法で唯一、国交省の不燃認定を取得した外断熱システムです。 省エネ性能だけでなく、豊富な左官仕上げのラインアップが有り、意匠性にも 優れています。 加えて、防水性と耐衝撃性、耐クラック性も備えています。
オーナー様にも意匠性、省エネ性ともに高い評価を頂き、本当に不快感のない快適な空気を実感しているようです。特に年に一度必要としていたピアノの音が狂わなくなったくらい湿度環境が違うというのは、実感としても分かりやすく予想以上に驚かれていました。
採用製品
平野智司計画工房
平野智司

他の家づくりのアイデア

プロの住宅レシピ カテゴリ