プロの住宅レシピ 細長い敷地をのびやかに。子どもの居場所が広がる住まいの工夫

藤木 俊大・佐屋 香織
「子どもが楽しく過ごせる場所をつくりたい」というご要望に応え、段幅を広くとった階段や壇上のスペース、ボルダリングを設けた壁など、いくつかの居場所を住まいの中に計画しました。
敷地が細長く狭小という条件から、各個室を取ろうとすると、家族で過ごす場所が狭くなるという課題がありました。そこで、暮らしの中心になるLDKをひとつの大きな空間とし、キッチンにいながらも子どもが遊んだり宿題をしている様子が見える距離感を大切にしました。
大きく設けた階段は、移動のための動線だけでなく、居場所や遊び場としても機能します。階段からつながる壇上スペースは、子どもたちが小さい頃は書斎として。子どもたちが成長した今では、ランドセルやおもちゃを並べ、自分たちでカスタマイズを楽しむ場所として。ライフスタイルに合わせて柔軟に変化します。
LDKに圧迫感を感じないよう、窓の位置や外とのつながりにも工夫を凝らしています。住まいの奥に設けた窓からは、遠くに海を望むことができます。さらに窓辺から小さな庭へとつながることで、室内の遊び場と屋外が緩やかに連続します。
片流れ屋根に沿って設けたハイサイドライトは、隣家の存在を遮りながら空だけを取り込み、開放感をプラス。大階段の吹き抜けによって縦方向の広がりも生まれ、敷地の広さを超えたのびやかさが感じられます。
収納は壁と一体化して設計。目地と収納のラインを揃えることで、まるで隠し扉のように目立たず、空間にすっきりと馴染みます。見せたいもの以外はできるだけ壁の中に収めることで、限られた面積をより広く心地よく暮らせる工夫が詰まっています。
PHOTO: Nao Takahashi