プロの住宅レシピ 暮らしの質を高める、中庭のある暮らし
仮屋 亘
室内の心地よさは、外部の存在があってこそ引き立ち、生きてきます。どんなに内装が美しくても、外部とのつながり方によって暮らしの質は大きく変わります。
しかし、街中や住宅街では、外に大きく開けず景色を取り込みにくいことも少なくありません。そこで、たとえ小さくても中庭を設けることをおすすめしています。
S邸(写真1枚目)では、中庭を囲むように寝室とリビングを配置し、家族の気配が自然に伝わるように計画しました。
デッキで各部屋がつながる構成で、家族の距離がほどよく近づきます。また、1メートルほどの小さな坪庭も設けたことで、さらに光と風を通し視覚的な広がりも生まれます。
坪庭の裏手には洗濯物を干すスペースを設け、室内や外部から見えない位置に配置することで、生活感を感じさせない工夫をしています。中庭に洗濯物を干すとどうしても生活感が強くなり、開放感が感じにくくなります。生活の中で必要な便利さを大切にしながらも、空間を美しく保つ…このバランスを大切に設計しています。
住まいの横に大きな道路が走るA邸では、外部からの視線を遮るために塀を高くし、中庭を設けることで、光と風は十分に取り入れるように設計。中庭の奥に洗濯物を干すスペースをつくり、室内からは見えない位置に収めています。
すっきりとしてた空間を保つには収納計画も重要です。
普段よく使う小物を片付ける場所と、大きな納戸収納に分け収納を確保。
大きな収納では天井まである建具で壁のように仕上げることで、大容量を確保しながらも、収納の存在を感じさせません。
設計の工夫によって、無理なくすっきりとした空間を保つことができます。