プロの住宅レシピ 建坪8坪、限られた条件の中で工夫を重ねた住まい
澤崎 麻子
洗濯機を置くスペースを確保するのも難しいほどの狭小住宅。
建坪わずか8坪という限られた条件と、ローコストという制約の中でも、できるだけの希望を形にするために、どこに手をかけ、どこを省くかをひとつひとつ丁寧に判断しながら計画を進めました。
狭小住宅の準耐火構造では、柱や梁もプラスターボードで覆う必要があります。LDKの中央に立つ一本柱も同様に覆う必要がありましたが、意匠的に木を現しにしたいと考え、プラスターボードの上からラワン合板を重ね、木の質感を感じられるよう仕上げました。柱には手すりを埋め込み、安全性とデザイン性の両立を図りました。
床面積を少しでも広く感じられるよう、ダイニング側の窓は奥行きを持たせた出窓とし、ベンチとしても活用できるようにしています。また、ロフトを設けることで、限られた空間の中にも複数の居場所を生み出しました。
敷地は五角形に近い変形地で、その形を生かして建物も敷地なりに計画。壁をすべて白で仕上げると単調になり狭さが強調されるため、一部にラワン合板を貼り、素材の表情をプラスしました。さらに天井には斜めのカットを入れることで、空間に動きを与えます。
キッチンは必要最小限の造作とし、市販のワゴンや棚を組み込めるように計画。機器のサイズを細かく測り、ぴったり収まるよう設計しました。
特に天板の薄さにはこだわり、ミリ単位で調整。既製品のように立ち上がりを設けると存在感が強くなり、重たい印象を与えますが、あえて立ち上がりをなくすことで軽やかな印象に仕上げています。
こうした細やかな工夫の積み重ねが、限られた条件の中でも心地よい暮らしを実現しています。