プロの住宅レシピ 建坪8坪、限られた条件の中で工夫を重ねた住まい

アトリエ・アルコ
澤崎 麻子

ソケット

手摺やタオル掛けなどラインの細さや美しさにこだわっている。

天井や床に斜めのラインが入ることで、空間に動きが出て、狭さや圧迫感を感じない。

オーブンなど、調理器具は作業台の中に納まる設計になっている。

ソファーを兼ねた大きな出窓。出窓にすることで、床面積以上の広がりを作る。

洗濯機を置くスペースを確保するのも難しいほどの狭小住宅。
建坪わずか8坪という限られた条件と、ローコストという制約の中でも、できるだけの希望を形にするために、どこに手をかけ、どこを省くかをひとつひとつ丁寧に判断しながら計画を進めました。

狭小住宅の準耐火構造では、柱や梁もプラスターボードで覆う必要があります。LDKの中央に立つ一本柱も同様に覆う必要がありましたが、意匠的に木を現しにしたいと考え、プラスターボードの上からラワン合板を重ね、木の質感を感じられるよう仕上げました。柱には手すりを埋め込み、安全性とデザイン性の両立を図りました。

床面積を少しでも広く感じられるよう、ダイニング側の窓は奥行きを持たせた出窓とし、ベンチとしても活用できるようにしています。また、ロフトを設けることで、限られた空間の中にも複数の居場所を生み出しました。

敷地は五角形に近い変形地で、その形を生かして建物も敷地なりに計画。壁をすべて白で仕上げると単調になり狭さが強調されるため、一部にラワン合板を貼り、素材の表情をプラスしました。さらに天井には斜めのカットを入れることで、空間に動きを与えます。

キッチンは必要最小限の造作とし、市販のワゴンや棚を組み込めるように計画。機器のサイズを細かく測り、ぴったり収まるよう設計しました。
特に天板の薄さにはこだわり、ミリ単位で調整。既製品のように立ち上がりを設けると存在感が強くなり、重たい印象を与えますが、あえて立ち上がりをなくすことで軽やかな印象に仕上げています。

こうした細やかな工夫の積み重ねが、限られた条件の中でも心地よい暮らしを実現しています。

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採用されている製品

照明ソケット|青山電陶株式会社
青山電陶株式会社
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澤崎 麻子
ここが私の評価ポイント!
青山電陶のソケットは非常に優れた製品で、自邸はもちろん、設計を手がけた多くの住まいでも愛用しています。特に魅力的なのは、そのシンプルさと美しさです。ソケットがシンプルな円筒形で、壁に取り付ける部分とソケットの穴の径が同じサイズというデザインは、意外と市場に出回っていません。一般的なラッパ状に広がるソケットと比べると、取り付けが少し難しく、職人さん泣かせな面もありますが、それでも選びたい製品です。 さらに、素材がプラスチックではなく陶器である点も魅力です。陶器ならではの重厚感と質感が空間に落ち着きと品を与えて、経年による劣化もありません。長く美しく使い続けられるのも嬉しいポイントです。
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