プロの住宅レシピ 「光のデザイン」でつくる、植物と暮らす角部屋のリノベーション
竹味 佑人
南と東の窓から光がたっぷりと差し込む角部屋の特性を生かし、植物とともに暮らすライフスタイルに合わせて間取りを再構成したリノベーションの一室。
観葉植物やハーブ、バルコニーの果樹を育てる暮らしを前提に、採光や通風、動線をデザイン。家族とのつながりを感じながら、植物の手入れや触れ合いを楽しめる空間づくりを目指しました。
このマンションリノベーションのテーマのひとつが「光のデザイン」です。
住まい全体をワンルームに近い構成へと変更し、もともと5つ並んでいた窓を単なる開口の連なりではなく「大きな一枚の窓」としてデザイン。ヘムロックの木の板を連続して設けることで、部屋全体がやわらかな光に包まれた大きな窓辺空間となり、外とのつながりや景色を感じるさまざまな居場所が生まれました。
窓の上部には内側に折り上げた庇を取り付け、自然光を室内の奥まで届けています。さらに庇の上部には間接照明を仕込み、夜には光の帯が窓際を照らすことで、昼と夜で異なる光の表情を持たせています。
一方、窓際の反対側の壁にはシルバー塗装の仕上げを採用。
窓から差し込む光が壁面に反射することで空間全体を明るくします。さらに、時間や季節によって変化する光と影が壁に映り込み、住まいに豊かな表情をもたらします。
天井には既存のコンクリートをそのまま現しとし、自然素材と素地の質感を対比させることで、この部屋ならではの質感をつくり出しました。
素材や色味など住まい全体の要素は抑えながらも、キッチンや洗面室には奥様がセレクトしたお気に入りのタイルをアクセントとして取り入れています。
家族と過ごす時間とともに、植物の成長を感じる時間。ふたつの時間が重なり合いながら、この住まいの豊かさを育んでいます。