プロの住宅レシピ 白と黒そしてグレー。暮らしの変化を映す住まい
外観は白と黒を半分ずつに分け、その間にはグレーの杉板の塀を設けています。
物事の対比を「白」と「黒」で表現し、暮らしの変化で生まれる時間の幅を白と黒が混じりあうグレーで表現しています。
横に貼った白と縦に貼った黒のガルバリウム。この対角線上に配置したSP・ガルブライトという材料は、断熱材を兼ねた性能を持ちます。さらに屋根や床には吹き付けのアイシネンを使い、壁はアイシネンを吹き付けた上にガルブライトを貼る施工で、断熱性能を格段に高めました。
こだわりの素材と施工のおかげで、夏はエアコンは29℃で快適に過ごせ、冬も寒さをさほど感じません。
杉板は時間の経過とともに日焼けしてグレーに変化します。ここではあえて最初からグレーで塗装することで、時間の変化を先取りし、建築の中に時間の流れを刻みました。
白と黒からグレーが生まれていく…。グレーの杉板の塀は、家具や絵が飾られ、暮らしが重なることで少しずつグレーが増え、変化していく時間の幅を表現しています。
内部空間では、暮らしの変化を「音楽のような流れ」として感じられる住まいを目指しました。生活音や会話、料理の香りなど、五感で感じる様々な流れがリズムをつくるイメージです。
家の中心に光と風を取り込み、吹き抜けを介して各部屋がゆるやかにつながります。室内窓を通して二階の親子が声をかけ合い、さらに吹き抜けを通じて一階のLDKとも気配が交わります。
部屋という単位ではなく、家全体をひとつの建築として考え、個室を持ちながらも、ワンルームのような緩やかなつながりをもたせました。
白と黒、明と暗、静と動…。
暮らしの中で生まれるコントラストが、時間の経過とともに混ざり合い、新しい色を生み出していきます。ときに違和感となることもあるけれど、それもまた暮らしの一部。排除せず受け止めることで、時間が自然と調和を生む住まいになっています。
Photo : Takeshi YAMAGISHI