プロの住宅レシピ 食と暮らしを楽しむ、9坪の都心の住まい

豊田空間デザイン室
豊田 悟

暮らしの中心に据えた、キッチンとダイニング。1・2階はど天井が低くなるため 3階に設け、屋根を斜めにすることで高さを確保した。

すべてグレイッシュトーンで統一。塗装の表情の違いによって、場所ごとに微妙なニュアンスの変化を生み出している。

利便性の高い大容量収納と、飾り棚で設けたデザイン性の高いニッチ。

タイル

一般的なキッチンタイルより厚い13ミリのタイルを採用したことで、空間が締まる。

ガラス作家ピーター・アイビーによるカプセル型の照明をセレクト。 「照らす」よりも「灯りのデザインを楽しむ」感性が、この住まいらしさを際立たせている。

準工業地域に建つ、敷地面積わずか9坪の住まい。
この敷地条件の中で、暮らしのバランスを大切にしながら、ご夫婦の好きな「食」を楽しむ住まいを計画しました。

土地探しでは利便性の高い立地を重視し、限られた土地でも三階建てにすれば快適に暮らせると考えて、この場所を選ばれたご夫婦。狭小住宅であるうえに木造耐火構造としたため、壁厚が増して室内寸法がさらに制限されます。加えて、地盤の問題もあり、鉄杭を30本以上も打ち込む必要があるなど、設計上の工夫と見えない部分での手間やコストが大きくかかりました。

ご夫婦の共通の趣味は料理とワイン。
そこで、暮らしの中心をキッチンとダイニングとし、大きなダイニングテーブルを主役としました。空間に余裕がないことから、リビングを設けず、食卓を多目的に使うスタイルです。

キッチンでは、キッチンとカウンター、収納を一体化し、端から端まで同じ高さで作ったことで、伸びやかさと広がりが生まれました。
キッチン前面には13mm厚のタイルを採用し、自然なグラデーションと重厚感のある質感が、空間全体のアクセントとなっています。
収納では、壁の厚みを活かしてニッチを設けるなど、遊び心も大切に。飾り棚のようにデザインすることで、棚というよりはアートのような印象を与え、空間に奥行きを添えています。

吹き抜けや中庭のような大きな仕掛けをつくることはできませんでしたが、収納や階段まわりにデザイン性を持たせるなど、限られた条件を前向きにとらえた工夫と遊び心が詰まっています。
必要なところにはしっかりとコストをかけ、コストカットする部分はアイデアと工夫でカバーすることで、ご夫婦のこだわりを住まいに反映した狭小住宅です。

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採用されている製品

豊田空間デザイン室
豊田 悟
ここが私の評価ポイント!
キッチンを中心とした空間づくりにおいて、通常より厚みのある13mm厚のタイルを前面に採用しました。その結果、空間全体が引き締まり、重厚感のある印象に仕上がりました。タイルの色味や自然なグラデーション、質感が美しく、キッチンだけでなく、空間全体に豊かな表情を与えてくれます。視覚的なアクセントとしても効果的で、空間に奥行きと深みが生まれました。
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豊田 悟

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