プロの住宅レシピ 光と庭のレイヤーが紡ぐ暮らし──国立の環境と溶け合うコーポラティブハウス
東京都国立市。旗竿敷地に建つこの住まいは、6世帯が参加してつくり上げた長屋形式のコーポラティブハウスです。
単独で土地を購入するには負担の大きいエリアで「共に土地を買い、建物を共有し、庭を使い合う」というモデルが採用されました。建築家は企画段階から加わり、住まい手の希望を汲みながら建物全体のあり方を丁寧に整えています。
この建物の核となるのは「多様な庭に住まう」という考え方。6戸が囲む共用庭、襞状の外形が隣地側に生み出す専用庭、途中階のテラス、屋上のルーフガーデン──4つの異なる庭が水平と垂直方向に連なり、建物中を流れるように配置されています。
住まい手はそれぞれの生活動線の中で外部環境を選び取ることができ、朝日を浴びる庭、木陰に包まれる庭、開けた風の庭と、その日の心身に合った外との距離感を保てます。
さらに特徴的なのが、住戸同士が立体的に絡み合うクロスメゾネットの構成。1階と2階の配置がテトリスのように組み合わされ、各住戸が異なる方向へ窓を持っています。
単調に並ぶ集合住宅とは対照的に、住戸ごとに光の入り方も風の抜け方も異なり、多方向の環境と関係を結ぶことがでるのです。内装は住まい手ごとに自由設計ですが、光の扱いや素材の反射を活かした環境とのつながり方は共通の思想として保たれています。
素材選びにも、国立という街との連続性が強く意識されています。アプローチには多摩産材のヒノキとスギを用い、建設中に出た土を練り込んだ舗装ブロックや、この地域の植生を取り入れたランドスケープが全体を結びつけています。
建物の外側の庭と内部の生活の境界を曖昧にして、街全体がひとつの大きな庭として積層するような感覚をつくり出しています。
庭を通して街と連続し、光と風の移ろいを住まいに引き込む──ここでの暮らしは、外と内を優しく往復しながら育っていく。国立という街に溶け込みながら、静かに成熟していく住宅の姿がここにあります。
Photo:中山保寛