プロの住宅レシピ 静かに整う時間── 掛け流し温泉付きの別荘

タジェール
中村 雅子

夜になると室内の光が大きな開口越しに柔らかく滲み出す。深い軒と木質外壁が光を受け止め、庭と建物の輪郭を静かに浮かび上がらせる外観計画。

建物は敷地の中央に配置し、周囲の緑との距離感を丁寧に調整。敷地が高く外部と目線が合いにくいため、日中はカーテンに頼らず開放的に過ごせる。

軒下のアプローチは、雨や日差しをやわらかく受け止めながら室内へ導く中間領域。平屋ならではの水平ラインが移動そのものを穏やかな体験へと変えている。

庭に向かって開かれた温泉浴室。湯に浸かりながら木立を眺め、身体を温める時間を主役に据えた設計とした。設備操作も抑え、入浴に集中できる空間。

箱根・仙石原の自然環境の中で、この別荘は「安心して長く滞在できること」を大きな前提として計画されました。お施主さんは将来を見据え、生活のすべてがワンフロアで完結する平屋建てを希望。段差や上下移動をなくし、身体への負担を極力抑えた構成が選ばれています。

箱根という土地柄、設計で特に重視されたのが気候への対応です。湿度が高く、季節による温度差も大きい環境のため、室内には除湿を軸とした空調計画を導入しています。

各室に除湿機を設置し、湿度をおおよそ50%前後に保つことで、木質空間でありながら一年を通して快適な室内環境を整えています。日常的なメンテナンスは最小限に抑え、長期滞在でも負担にならないことが意識されています。

建物は敷地の中央に配置され、外部との距離感を丁寧に調整。敷地が周囲より高いため、外からの視線を過度に気にする必要がなく、日中はカーテンを閉めずに過ごせます。外出時のみブラインドを下ろすことで防犯と開放性を両立しています。

外観は深い軒と木質の外壁で構成され、昼と夜で表情を変えます。夜には室内の光が柔らかく漏れ、庭と建物の輪郭が静かに浮かび上がります。内部では、視線の先に常に庭や木立が入り込み、屋内外の境界を意識させません。

温泉を備えた浴室はこの別荘の核となる場所です。湯に浸かりながら緑を眺め、身体を温めた後は洗面空間のベンチで休む──タオルウォーマーや操作性を抑えた設備機器が、動作をシンプルにし、入浴後の時間まで含めて設計されています。

この住まいは、派手な演出ではなく、身体の感覚に寄り添うことで価値をつくる別荘。
自然環境、設備、動線が重なり合い、滞在そのものが穏やかに整っていく。その積み重ねが、ここで過ごす時間を静かに支えています。

Photo:Nacasa & Partners

シェアする

採用されている製品

タジェール
中村 雅子

他の家づくりのアイデア

プロの住宅レシピ カテゴリ