プロの住宅レシピ 街をまるごと引き込む、大きな窓のある住まい
高台で東側が崖となって大きく景色が開ける場所に建つ住まい。この景色をひとつの方向に固定せず、多様な見え方が生まれるよう設計しました。
同じ風景でも、立つ場所や座る場所によって、見えるものや感じ方は少しずつ変わります。そこで、床の高さを断面的にずらすことで、視点の変化を生み、景色を捉えています。
その体験の軸となるのが、東側に設けた大きな窓です。
この大きな窓には、窓越しに「あちら側」と「こちら側」をつくり、住む街を眺める対象として切り取るのではなく、街の環境を室内に引き込みたいという思いがあります。 この窓は1階・2階・半地下のすべての空間で共有され、どこにいても異なる距離感で景色と向き合えるようになっています。
1階は、リビングの床を約1.6メートルと高く設定。
玄関を入ると、窓の高さがちょうど人の目線の高さにくることで、街並みは一切見えず、大きな窓越しに緑と空だけが広がります。
雑多な情報が遮られ、時間がゆっくりと流れるような感覚があります。
そして、大きな階段を上がりリビングに立つと、壁一面に景色が広がり、展望台にいるような感覚になります。
2階に上がると、景色は一変します。
街並みが望め、夜には住まいのひとつひとつの明かりに暮らしの気配を感じます。時間の流れがぐっと早くなり、街の営みを感じる景色が広がります。
半地下へ行くと、窓の下端が地面と同じ目線になり、穴ぐらにこもるような安心感の中で、朝日が低く差し込んできます。
こうした多様な景色の中で過ごす空間に置かれる家具も、この住まいの要です。
仕事柄、多くのデザイナーズ家具を所有されており、「家具が映える空間にしたい」というご希望でした。
デザイナーズ家具は、それぞれに完成度が高い一方、強い存在感を持っています。そこで、天井の高さを確保し、小さな住宅の中に「大らかさ」と「懐の深さ」をつくることで、家具と空間、風景が調和し、ショールームのような雰囲気を感じさせます。
機能で空間を区切り、部屋に人の行動を当てはめるのではなく、「どんな光が入り、どんな風が抜けるか」といった環境から人の行動を導く住まいづくりによって、街にあった自然体の暮らし方を追求しています。