■ Dachaという居場所──畑に寄り添う牛久の菜園ハウス
茨城県牛久市。自宅から車で5分ほどの距離に建つこの小さな建物は、日常から少しだけ離れて過ごすための菜園ハウスです。
畑作業の合間に料理をし、休憩し、ときには娘家族も泊まれる。別荘というほど遠くなく、かといって完全な生活の場でもない──「外にもうひとつの居場所を持つ」という発想からこの住まいは生まれました。
建物のテーマとなったのは北欧の(Dacha)文化。冬が厳しい土地で、短い夏を最大限に楽しみながら野菜を育て暮らすための小屋です。
スウェーデン育ちの娘さんのご主人と、留学経験のある娘さんが親しんできた文化を背景に、外観・内観ともにスウェーデンブルーとホワイトで統一。畑の緑にやさしく馴染みながら、どこか異国の空気を漂わせています。
内部はコンパクトながら、1階に庭室、2階にロフトを備えた構成。畑で採れた野菜を持ち込み、そのまま調理できるダイニング・キッチンは、作業と休息を切り替える拠点となります。天井の高い空間にはシーリングファンを設え、空気を循環させることで、小さな建物でも快適性を確保しています。
外国人の来客が多いことから、和室も計画されました。和紙の建具や提灯照明、文机を置いた空間は、日本的な落ち着きを保ちながら上質な空間に仕上げています。
鴨居や押入れを浮かせた納まりにより足元に余白が生まれ、視線も軽やかに抜けていきます。限られた面積の中で、空間をどう軽く、豊かに使うかが丁寧に考えられています。
ロフト壁面に設けた丸窓もこの家を象徴する要素のひとつです。防火規定という条件から生まれたかたちですが、圧迫感を避けるために選ばれた円形が、結果として遊び心ある表情をつくり出しました。必要に迫られた条件を、そのままデザインへと昇華する設計の姿勢が、随所に現れています。
畑とともにあるこの小さな家は機能や効率を超えて、暮らしのリズムを整える場所。自然の恵みを受け取り、手を動かし、静かに過ごす ── その積み重ねが、ここでの時間を豊かなものにしていきます。
Photo:Nacasa & Partners