プロの住宅レシピ ポタジェから広がる暮らし方とデザイン

平井 政俊
ヴィラ・ポタジェと呼ばれる住まい。
「観光を通したまちづくり」を考える拠点として、ポタジェから考える住まいづくりを行いました。
ポタジェとはフランス語の「ポタージュ」が語源で、野菜やハーブ、果樹、草花を混植し、食用と鑑賞が両立する農園の手法です。風景としても楽しめる農的空間で、こちらの住まいでは東西南北にポタジェが広がり、街へとつながります。
菜園に草花が混ざり合うことで、さまざまな色合いの緑と、カラフルで鮮やかな花が四方を彩ります。 日当たりが良い南側の庭には日向を好む野菜や植物を、影になりやすい北側には日陰が好ましい植物を植えるなど、植物の性質に合わせた庭づくりができるよう設計しました。
映り影が美しい、大きな波型のガルバリウム鋼板の外壁は、波のくぼみに農機具の柄がすっぽりとはまり、農具を立てかけるツールの役割も果たします。
住まいの中心を走る上土間うわどまはポタジェへと続くように設計することで、子どもたちは室内と室外の境を感じることなく、ぐるぐると自由に走り回れます。常に植物が身近にある環境は、子どもたちの感性を刺激し、心を育みます。天気や植物の成長を気に掛けるなど、自然と身についたことも多いそうです。
お施主様は子育て環境を求め、故郷へUターンしました。この住まいに移られてからのお子様たちの変化や、表情豊かで自発的な姿から、住まいと環境の大切さを改めて実感した住まいです。