プロの住宅レシピ 小さく豊かに住まう、大人時間が流れるLDK

飯塚 修
約32坪の敷地に、数台の車の駐車スペースが必要であったこと、また予算上の制約から、「小さな住まい」を検討しました。
この住まいの設計では、「小さな家のプロトタイプをつくれないか」という発想から、限られた面積のなかで、実際の広さ以上の心地よさと機能性を追求しています。
小さな住まいには、いくつかのメリットがあります。まず、イニシャルコストを抑えられること。そして、光熱費や将来の外装メンテナンスといったランニングコストも抑えられ、暮らしてからも経済的であること。また、コンパクトだからこその「掃除のしやすさ」も、大切なポイントです。
小さい住まいだからこそ、見通しのよい広がりのある空間づくりは必須。吹抜けを取り入れ、間仕切りや建具を最小限にとどめるなど無駄をそぎ落としながらも、豊かに暮らす工夫を施しています。そのひとつがLDKに設けた前庭です。前庭を設けることで外からの視線をほどよく遮ることができ、カーテンで閉じることなく、開放的でありながらもプライバシーが守られます。
開放的なLDKには、お施主様が持ち込むと決めていたピアノをLDKの中心に据え、キッチンにはカウンターやバースツールを設置することで、ジャズバーのような大人の雰囲気へとデザインしています。昼間は、二階の大きな窓から吹抜けを介してたっぷりと光が入り、明るく爽やかな空間ですが、夜になると、温かな色の照明が木材を照らし、落ち着いたムードのある雰囲気へと表情を変えていきます。
今回は終の棲家(ついのすみか)として設計していますが、子育て世代など、幅広いライフステージにもフィットするような住まいです。