プロの住宅レシピ 小さな住まいを豊かにする「ふたつの入り口」

飯塚 修
32坪ほどの敷地に小さく建てたこの住まいには、玄関を二つ設けています。
小さな住まいには一見贅沢とも思えますが、むしろそれが暮らしの快適さと空間の豊かさにつながっています。
ひとつは、道路に面した格子戸の玄関。戸を開けると、そこには半屋外の前庭が広がり、お客さまを迎えるためのアプローチ空間となっています。町家のように、来客はこの前庭からそのままリビングへ。リビングは建具で緩やかに仕切られてはいるものの、視線はそのまま奥へと抜け、空間の広がりを感じさせます。
もうひとつの玄関は、家族専用の入り口として設けた勝手口。こちらは機能性を重視し、動線のよさや日々の使い勝手に配慮しています。来客用の玄関と分けることで、日常と非日常が自然に切り替わり、ゆとりのある住まい方が可能になります。
道路に面する外観には窓を極力減らしていますが、夜になると前庭から漏れ出す明かりが街にやわらかく広がり、街とほどよくつながります。
小さな家だからこそ、工夫を積み上げることで少し豊かに。そんな想いが詰まった住まいです。