プロの住宅レシピ 暮らしの声が空間を整えていく──洗面所という“生活の器”

暮らしの “こうだったらいいな” を、ちゃんとかたちに。
「タオルをちょっと置ける棚が欲しいなあ」
「このへんに仮干しできるスペースがあると助かるんだけど…」
そんな日常のささやかな“つぶやき”が、建築家・関本さんの設計では、しっかり図面に落とし込まれていきます。
関本さんは、住まい手の“言葉にならない本音”をすくい取る達人。
新築やリフォームの打ち合わせで、多くのご家庭が密かに願っているのはこんなこと。
「これを機に、スッキリ片付いた暮らしを始めたい」
「今度こそ、ちゃんと整った家にしたい」
でも気合いだけで毎日きれいに保つのは、正直むずかしい。
『でも、大丈夫です。皆さんそうおっしゃいますが、実際にはちゃんと片付いてますよ。私たちが“何をどこに置くか”まで考え抜いていますから』と、関本さんはいたずらっぽく笑います。
関本さんの家づくりは、収納をどーんと用意して「ご自由に」では終わりません。
洗面台の裏やタオルの仮置き場、ピンチハンガーの位置まで、すべてが最初から計画済み。
動線に馴染んだ設計だから、気づけば自然と片付いているのです。
中でも人気なのが、“無印良品規格”での収納設計。
「この商品をこの数だけ買ってください」とリスト片手に、お施主様は無印でお買い物。
引き渡しの日には、棚にも引き出しにもクリアケースがぴたりと収まり、入れるものまで決まっているという気持ちよさ。
たとえば洗面室の収納棚。扉を開けると、A4ファイルボックスが2つぴたり。
このボックスがハンガーの収納にぴったりだというのも、奥様方の“生活の知恵”から生まれた発見です。
作業台の上で洗濯物を畳みアイロンを。壁にはピンハンガーを一時かけておけるフックも完備。
「手の届く範囲に置き場所が決まっていれば、いちいち物を探して動くことも、移動して片付けることもなく散らかりません」
と誇らしげに笑いつつ、『でも“自分で決めたい派”には踏み込みませんよ』とお茶目に微笑みます。
暮らしの姿勢が一番素直に映るのは、水まわりかもしれません。
その空間を、まるで家事の相棒のように頼れる存在にしてくれるのが、関本さんの設計です。『奥様の気持ち、けっこうわかってるでしょ?』と、にっこり楽しそうに。