プロの住宅レシピ 自然の力で快適に、機器設備に依存しすぎない住まい

緒方 幸樹
「できるだけ機器に頼らず、風や光を取り込みながら、自然の力で快適に暮らせる家にしたい」 という希望からはじまったこの住まいは、空気や光の流れを丁寧に設計し、自然素材を多用することで、機器設備に依存しすぎない心地よい住環境を目指しました。
まず、開口部の設計では、風を通すための窓、光を採り込む窓、景色を眺めるための窓など、明確に役割を分けています。たとえば、ソファ横に設けた小窓は、そこに座ったときにちょうど空が切り取られて見えるように設計することで、プライバシーにも配慮しながらも、視線の抜けをつくります。また、格子戸や障子を用いることで、日射を柔らかく遮ったり、断熱性を高めたりと、室内環境を整える工夫を施します。
この住まいでは、空調設備は補助的なものとして考えています。エアコンはリビングなどには設置せず、2階の小屋裏に配置。屋根を支える垂木と垂木の間にある 面戸 の隙間を利用し、冷やされた空気が小屋裏から2階へ、そして階段室を通って1階へと落ちてくるように設計しています。こうした空気の道をつくるため、階段やルーバーの配置に工夫を凝らすことで、暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へと流れる性質を利用し、家全体に空気が自然と循環します。
また、一つの建具で二通りの使い方を持たせることで、廊下が脱衣所に変わるなど、限られた空間を柔軟に使える工夫もこの住まいの特徴です。