プロの住宅レシピ 「長く住み継がれるために」、将来の改修を見据えた家づくり

REGION STUDIES
白坂 隆之介

高窓から差す三筋の光。

シンプルな構成で梁などはあえてあらわしに。新築でありながらも、リノベーションの住まいのような雰囲気が生まている。

「将来、他の施主・設計者が改修を行うかもしれない」という条件を前提にして設計。

外からの視線も気にならない。

3つの片流れ屋根。

この新築の住まいは、「家は長く住み継がれるべき」という考えに共感されたお施主さまと、将来の暮らし方や資産としての運用まで見据えて計画したものです。
「子どもが巣立つなど世帯構成が変わったり、さらには売却や賃貸運用などで利用主体が変わったりする際、この家はどう使われ得るか?」という問いを起点に、長く暮らせること、そして将来リノベーションや増築もしやすいことを大切にし検討を進めました。

この家で特徴的なのは、3つの片流れ屋根と南向きの高窓です。建て込んだ地域の私道沿いに建つため外に大きく開くことはできず、コスト上の制約から中庭を設けることもできなかったのでこうした形式を採用したのですが、雁行しながら均等に並ぶ片流れ屋根が外部空間にリズムを与え、高窓から差す三筋の光が室内空間にもリズムをつくります。高窓越しに見える空や日差しは時間とともに移り変わり、自然のリズムも引き込んでいます。
中庭に代わって建物中央に配された水廻りは、室と室の距離感をほどよく保つと同時に、シェアハウスなど複数の主体が家を切り分けて利用することも考えやすくします。これまで空き家の改修を多く手掛けてきた経験から、こうしてシンプルに整理された構成が、将来改修設計を考える際にも想像力を喚起するだろうと考えました。

室内の柱や梁はあえて見せ、筋かいや間柱も露出させています。これは将来の改修がしやすくなるだけでなく、躯体のメンテナンスのしやすさやシロアリ被害などの劣化対策にもつながり、家としての耐久性の向上に大きく寄与します。
設備を隠して白い箱のような美しさを追求するのではなく、架構や設備をきちんと整理して見せることで、暮らしの中で生まれる雑多なものも受け入れられる空間としています。長く住み継がれる家には、こうした“懐の深さ”も大切だと考えています。

住み始めたお施主さまにも「一日中家の中が明るくて、とても気持ちがいい」と喜んでいただいています。夜には高窓から月が見えることも楽しんでくださっているそうです。

Photo : 大塚敬太

シェアする
REGION STUDIES
白坂 隆之介

他の家づくりのアイデア

プロの住宅レシピ カテゴリ