プロの住宅レシピ 光のグラデーションが広がる、暮らしの中心の吹き抜け空間
お施主様の希望は、「家族がどこにいても、雰囲気や存在を感じられるような、つながりを持った家にしたい」というものでした。
建物は三階建てで、地下・1階・2階の三層を吹き抜けでつなぎ、どの階にいても家族の気配や空気が伝わるよう、どの部屋も「吹き抜けにどう面するか」を大切にしています。
吹き抜けは用途を固定せず、自由に使える「家族の居場所」です。
個室やリビングではない空間で、勉強やゲームなど、家族が思い思いに過ごせます。リビングと吹き抜けはスキップフロアで半階ずらすことで、同じ空間にいながらも適度な距離感と視線の抜けをつくっています。
ただ空間を設けるだけでは自然に集まる場所にはなりません。そこで、階段や収納、ベンチなどを組み込んだ多用途の造作家具を配置。リビングからテラスへ出る通路としても利用できるなど、複数の役割を兼ね備えることで、自然に使われるアクティブな空間になっています。
吹き抜けが家族の居場所として活きる一方、リビングはゆっくりとくつろげる場として機能します。ソファに座ってテレビや景色を眺めるなど、落ち着いた時間を過ごせる空間です。吹き抜けの存在が、リビングをよりリビングらしく引き立てます。
さらに、吹き抜けを介してテラスへつなぐことで、空間に豊かさが生まれます。テラスはリビングと同じ高さですが、同一フロアで連続させるよりも、「吹き抜け」という別の空間を間に挟むことで、住まい全体に奥行きと広がりを与えています。
吹き抜けからつながる地下室は、ピアノやトレーニングができる趣味の空間です。吹き抜けから漏れる光が地下室に届くため、閉鎖的な印象はありません。階を上がるごとに明るさが増し、光のグラデーションによって空間の印象が変化します。
Photo : 鳥村鋼一写真事務所