プロの住宅レシピ 小屋と帽子の家 ── 立体ワンルームがつくる家族の距離感
安田 智紀
夫婦2人と子ども2人のために計画された「小屋と帽子の家」。構想は部屋を積み上げる住宅ではなく、建物全体を一つの立体的なワンルームとして捉える住まいでした。
1階はダイニングキッチン、2階はリビングという基本構成を持ちながら、塔屋に向かって梯子のように掛けられた階段を中心に、上下の空間がふわりと包み合うように繋がっています。
計画の核となったのは「環境装置」としての住宅です。暖まった空気が上昇する煙突効果に着目し、換気口を設けた塔屋の直下を大胆な吹抜けとすることで、空気の流れそのものを建築の形に落とし込んでいます。
古い空気は自然に上へと抜け、家全体に緩やかな循環が生まれているのです。
家族の距離を縮めるため、1階の天井高はあえて約2mに抑え、床レベルを下げることで全体のスケールを調整。背伸びすれば届くほどの高さ感が、上下階の心理的な隔たりを小さくしています。
リビングは6畳を2つに分節し、テレビとソファを置くオーディオ的な居場所と、日当たりの良い遊びの空間を分けて配置。機能を固定しすぎず、暮らしのシーンに応じて使い分けられる構成としています。
階段は板が浮遊しているかのような軽やかなデザイン。左右で互い違いになった踏み板の遊び心ある構成は、煙突部分まで登ることができ、花火を眺めたり、秘密基地のように使われたりと、日常に小さな冒険をもたらします。
「リビングでくつろぎ、ダイニングで食事する」という機能を解体、そのとき心地よい場所に自然と身を置く暮らし。立体ワンルームという構えが、家族それぞれの時間と距離感をやわらかく受け止めています。