プロの住宅レシピ 素材と動線がつくる ── 使われ方から立ち上がる暮らし
富士山を感じられるこの住まいは、空間をどう見るかではなく、どう歩き、どう触れ、どう使われていくか──その積み重ねが暮らしの輪郭を形づくっています。
この住まいに至るまでには、数多くの検討が重ねられています。当初は30案以上のプランが提示され、迷いを重ねながらも、最終案に辿り着いたときには、構成全体が一気につながる感覚があったそうです。
住まいの内部構成はスキップフロアによって整理されていて、動線自体はとてもシンプルです。洗濯や収納といった家事機能は1階にまとめられ、日常の作業は上下移動を最小限に抑えて完結します。
野球に打ち込む子どもを含む活発な家族構成に対して、移動が複雑になりすぎないことも考慮されました。上下階を行き来しながらも、生活の流れが途切れないよう、動線はすっきりまとめられています。
一方でキッチンとLDKは2階に配置され、生活の中心となる場が集約されています。階段やスキップフロアの構成は、家族それぞれの居場所を確保しながらも、移動の途中で必ず気配が交わるよう計画されています。
細部には空間を均質にしすぎないための造作的な工夫も施されています。天井にはフローリング材を用い、1枚ずつ外して照明を仕込む構成とすることで、光の位置やリズムを調整。仕上げで印象をつくるのではなく、つくり方そのものに手を入れています。
外壁に採用された木毛セメント板も、完成形よりも時間の経過を前提とした素材選びです植物や蔦が絡み、風雨にさらされることで表情が変化していく。そのため防水面には十分な配慮を施し、素材の特性を理解したうえで使われています。
動線を整え、素材を揃え、外部を生活に引き寄せる。そうした一つひとつの判断が重なり、暮らしの中で違和感なく使われ続ける住まいがつくられています。