プロの住宅レシピ 森を取り込む住まい──自然素材と手仕事が支える暮らし
栗原 守
室内に足を踏み入れると、まず感じるのは木の香りとやわらかな光。天井には宮城県産の栗駒杉を用い、床は1階に栗、2階に杉と樹種を使い分けています。
1階には床暖房を導入しているため熱に強い広葉樹の栗を採用。無垢材でも使用できるよう、低温水式の床暖房とし、素材への負荷を抑えながら快適性を確保しています。
1階リビングは西側の保存樹林に正対する配置。敷地が樹林地側へ下がっていることで、視界には幹ではなく葉の重なりが広がります。主開口は西側に大きく設け、風通しを確保するための窓を随所に配置。加えて南側の高い位置に小さな窓を設けることで、直射日光を避けながらも安定した明るさを取り込んでいます。
リビングに連続する畳スペースには造作のカウンターと棚を設置。読書や作業、来客時の居場所として多用途に使えるよう、高さや奥行きは大工と相談しながら決定。座った視線の先に緑が入るよう窓位置も細かく調整されています。
キッチンや収納もすべて職人の手による造り付け。既製品に頼らず、使い勝手や寸法を暮らしに合わせて一つひとつ形にしています。お施主さんが大工さんと直接やり取りしながら進めた家づくりは、空間に対する納得感を高めるプロセスでもありました。
浴室はハーフバス仕様とし、下部はユニット、壁や天井には水に強いカナダスギを採用。座ったときに正面に緑が入るよう窓を設け、入浴中も森の気配を感じられる空間としています。
自然素材、太陽熱、雨水、そして手仕事。環境に配慮するという選択を、特別な行為にせず、日常の心地よさとして組み込んだ住まい。森とともに暮らす時間が静かに積み重なっていきます。