プロの住宅レシピ 自然と向き合う住まい──保存樹林にひらく家のかたち
栗原 守
東京都調布市入間町。敷地の西側には、NPOが管理する保存樹林「入間緑地」が広がります。
ご夫婦と大学生の息子の3人家族は、土地探しの段階からこの森に強く惹かれ、見学を重ねるうちにNPOの活動にも参加。林の整備を手伝いながら、自然と関わり続ける場所としてこの地を選びました。
家づくりにおいての最大のご要望は、「家のどこにいても森を感じながら暮らしたい」ということ。一般的に西側は西日を避けるため閉じがちですが、本計画ではあえて森に向かって開くプランを採用しています。大きな開口部やテラス、浴室の配置まで、西側の樹林を暮らしの一部として取り込む構成としました。
外観計画で特徴的なのが、誰もが使いやすいアプローチのつくり方です。地盤より約55cm床レベルを上げながら、階段ではなく緩やかなスロープで玄関へと導く計画としました。車椅子を利用するご友人が気兼ねなく遊びに来られるよう、寸法や動線をあらかじめ計画。単なるバリアフリーにとどまらず、「迎え入れる余白」を大切にした外構となっています。
また、玄関庇に落ちた雨水は地面へ導かれ、土中に自然に浸透する仕組みを採用しています。
都市型洪水対策として各地で推奨されている考え方を、住まいの中で実践しています。雨を自然の循環に戻すという姿勢が住まい全体の思想を象徴しています。
国産材を中心に、工務店や大工と顔の見える関係で進めた家づくり。森と共に生きるという選択を、外観やアプローチといった「最初に触れる場所」にまで丁寧に落とし込んだ住まいです。