出雲路の家 | 遠景遠景、中景、近景を取り込んだ風景を巡る住まい

作品紹介

新築

京都、東山を見渡す大きな川沿い、街なかではなかなか得難い眺望が得られるこの恵まれた敷地を初めて訪れたときにまず思い浮かべたのが、折に触れて訪れているいくつかのお寺や町家のことでした。比叡山、大文字山を中心とする東山の山並みを見渡す「遠景」、川の流れや堤防の並木を楽しめる「中景」、敷地の端に残された法面も取り込んだ庭を眺める「近景」。スケール感の違う3つの景色をいかに設計に取り込むかを考える上で、高山寺石水院や円通寺における借景の有り様、杉本家住宅や四君子苑における北庭と座敷の関係に大きなヒントがあると感じたのです。

 

<考えたこと>
■北側にゆったりと庭をとる配置計画
諸室の配置は敷地を取り巻く周囲の環境との関係で決まっていきました。 四季を通じて穏やかな順光の下で庭の眺めを楽しめるようにまず北側に大きく主庭を取り、それをL型に囲うようにして道路から遠い西側に寝室を中心とするプライベート空間、東側にパブリックな性格の食堂・台所を配置し、全体の骨格が決まりました。 この配置計画により建物の構成は北東側が欠き込まれる形となり、比叡山、すなわちこの街の「鬼門」方向を遠く眺めるこの住まいに求められるであろう、伝統に対する敬意が結果的に示されることになりました。

 

■大きなランドスケープと結びついたプランニング
遠景に対しては、川沿いの並木と敷地の端に元々たっていた立派な松の木の間を縫って視線が東山の「大の字」まで抜ける場所は実は2階レベルのごく一部しかないという発見が計画を決定づける一つの鍵となり、この場所を応接室兼セカンドリビングとしました。 個室からの眺めは比叡山を切り取った一幅の絵とすべく、平屋で納めた居間の屋根で表通りを隠し、元からあった2本の松の木を額縁のように見立て、その間に比叡山がぴたっと納まるように注意深く計画しました。

 

■小さな美術館としての住まい
これらの諸室をつなぐ動線はすべて単なる廊下ではなく、書画骨董から現代アート、アンティークの家具調度品まで多岐に渡るクライアントのコレクションのための「ギャラリー」と位置づけ、全体として「大きな住宅」というよりは「小さな美術館」を計画するつもりで設計を進めました。
また、全体のボリュームをいくつかに分割することで周囲の住宅地のスケール感から逸脱しないように気を配りながら、それぞれのボリュームごとに掛けられた屋根並みによって陰影のある外観を構成し、外構の計画と合わせて地域の景観形成にも寄与することを目指しています。

作品データ

所在地: 京都府 京都市

土地面積: 700.65㎡

延床面積: 415.91㎡

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