プロの住宅レシピ 積層する個室を緩やかに結ぶ住まい──洗面空間に宿る計画的な美しさ

東京都目黒区の住宅地に建つ三層構成の住まい。夫婦それぞれの仕事部屋やゲストルーム、リビングダイニングといった機能を明確に分け、階ごとに異なる雰囲気を醸すことがご要望でした。
道路面から下がった敷地条件を活かして地下にはご主人の仕事部屋や自転車を置くエントランス、1階には寝室や奥さまの仕事部屋、2階は勾配天井のLDKとテラスを計画。それぞれの階が廊下と階段でゆるやかに繋がっています。
その中で特に注目すべきなのが洗面空間。浄水機能付き水栓の設置が特徴で、お施主さんの希望を反映した製品選定と設計のこだわりが凝縮されています。
一般的に浄水用の蛇口を追加するとデザイン性を損なうことが多いのですが、左右対称に2つの水栓を並べることで、視覚的な美しさと機能性を両立。
浄水カートリッジは下部に組み込むことで外観に干渉せず、自然に馴染む収まりとなっています。大きなシンクに2つの水流を落とす構成とすることで、作業効率の良さとシンプルな造形美を同時に実現。
設計ではサイズ感や形状が「そのままストンと落ちるように」納まることを確かめた上で採用しています。
タッチ式で点灯・切り替えができるミラーの配線は計画段階で壁内に収めて造作のような一体感を獲得。
シンクの幅とセンターを正確に合わせる細やかな調整も行われ、既製品でありながら違和感なく空間に溶け込んでいます。
さらに正面に自然光を取り込みたいというご要望に応え、ハイサイドライトを設置。人工照明と自然光が響き合う環境をつくり出し、日常の使いやすさと快適性を象徴する洗面空間が完成しました。
個室を積層させた構成に、造作と製品を計画的に融合させた洗面空間、そして廊下や階段が緩やかなつながりを与えることで、住まい全体が有機的にまとまり、現代の暮らし方に応答する快適な日常を支えています。
photo:繁田諭