プロの住宅レシピ 窓が切り取る四季の雄大な自然──愛犬とのびやかに過ごす宮津の平屋住宅

京都府宮津市、日本海に面した雄大な自然を背景に建つ週末住宅。
過去の作品で手掛けた「八ヶ岳の別荘」を訪れて感銘を受けた施主夫妻が、自宅ではなく別荘だからこそ時間をかけ、将来的な移住も見据えて依頼した計画です。
ご要望はご夫婦と愛犬がのびやかに過ごせる庭としてドッグランを中心に、薪ストーブのある暮らしを叶える平屋でした。
構成の核は南の山に向かって開かれたLDK。深い軒を備えた大屋根は、構造を工夫することで材寸を抑え、水平ラインを軽やかに整えています。雪を意識した勾配の操作も、デザインの一部として自然に馴染ませています。
外壁は杉板、構造材には京都府産ヒノキを採用。地域性と素材感を重視し、時間と共に変化する山の色合いと呼応して暮らしに奥行きを与えます。
窓の稜線をフレームとして外の景色を切り取り、内部を介して四季の風景を眺める体験はこの住まいならでは。浴室も山に面しているため目隠しを設けず大きな窓を開放でき、湯に浸かりながら自然と向き合える贅沢さを実現しました。
リビング中央にはお施主さんが自ら選んだ薪ストーブを配置。高天井と組み合わせることで輻射熱が心地よく行き渡り、炎のゆらめきが視覚的な豊かさをもたらします。さらに木製製作建具の大開口は全て引き込み可能で、庭やデッキと連続する大らかな空間を実現。
広い庭は愛犬のドッグランとして計画され、室内には専用のペットドアを造作と組み合わせて設けられました。これにより安全性と意匠を損なうことなく犬が自由に内外を行き来でき、家族と同じように自然と繋がる暮らしの動線が整えられています。
単調になりがちな平屋に、窓の向きや背景を変える工夫を凝らすことで、多彩な景色と出会える空間に。自然を暮らしに取り込みながら、家族と愛犬がのびのびと過ごす週末住宅は、移ろい続ける環境と共に豊かさを育んでいきます。
photo:繁田諭