長年に渡って斬新な製品を送り出してきたウエストが、業界のみならず建築家やデザイナーから高い評価を得ることになったのが、三代目で現社長の西康雄氏によるデザイン改革でした。

「これからの建築アイテムは機能に加えて感性も重視されようになるはず。品質にもデザインにもこだわった製品を創ろう」という方針を立てて、優れたデザインと高品質を融合し、“親しい人を迎える"を意味するギリシャ語からネーミングされた「Agaho-アガホ-シリーズ」を1992年に誕生させると、これが大ヒットとなります。

多くの製品が世界的なデザイン賞を次々と受賞し、中でも世界で最も権威あるデザイン賞の一つである「ifデザイン賞」を受賞したディンプルキーは、1/100mmという超精密な加工精度（ちなみに人の目で識別できるのは20/100mm程度まで）を誇り、さらにピッキングやドリル破壊にも耐え得る堅牢性を兼ね備えるなど、ウエストの技術力とデザイン力が融合した傑作といってもいいでしょう。

「鍵やドアハンドルなどの建築金具によって部屋のイメージがビシっと決まる」そう語る建築家やデザイナーが増えているだけに、東京青山と大阪御堂筋にある洗練されたショールームには数多くのプロや施主が訪れています。デザイン・感性を重視するウエストですが、意外なことに原則として有名デザイナーを起用することはしていません。

「有名デザイナーだとNGを出しづらいですよね。企業としての方向性を守ると同時に、品質に影響を与えるようなデザインは採用できないこともあって、あくまでも我々が主導権を持ちながら優れたデザインを提案してもらうようにしているのです（西社長）」

「製造が需要に全く追いつかない」

ウエストの担当者が嬉しい悲鳴をあげるのが、スマートキー「E６」です。

現存の鍵を壊すことなく取り付けられる利便性に加えて、暗証番号の発行や入退室チェックなどをクラウド管理できる仕組みを備えるなど最新機能を装備しており、ホテルやショールームの無人化・賃貸物件管理などの商業利用から、家事サービスを導入したり、小さな子供の帰宅時間の把握などの家庭需要に至るまで実に幅広い分野で使われています。

創業以来の品質を重んじる姿勢に常に時代を先取りする進取の精神、そして高いデザイン感性が凝縮された、ウエストの新しい代表作、それがE6です。こうした優れた技術力と高いデザイン性の融合こそがウエスト建築金具の真骨頂と言えるでしょう。数々のオリジナル製品が世界的なデザイン賞を次々と受賞したこともあって、ウエストは「大阪の優れた金具メーカー」から「日本を代表する金具メーカー」へと変身を遂げたのです。