プロの住宅レシピ 居場所のグラデーション──動線と意匠が導く家族の住まい

木名瀬佳世建築研究室
木名瀬 佳世

L字型の配置が中庭を守りながら、内部へと光と視線を導き、夜には住まいの奥行きが静かに浮かび上がる。

中庭に向かって大きく開くダイニング。床タイルと外部床のレベルを揃えることで、内と外の境界を曖昧にし視覚的にも広がりを感じられる設えとしている。

リビングは視線の高さを操作することで落ち着きを生む。タイルとフローリングの切り替えが生活領域を自然に分節し、空間にリズムを与えている。

吹き抜けに面したライブラリーは作業と家族の気配が共存する場所。本棚やカウンターを造作でまとめ、個と共有のあいだを行き来できる程よい居場所として計画。

植栽やベンチを設け、通学路ともゆるやかに繋がることで、地域との関係性を育てる余白を残している。

この住まいで大切にされたのは、家族それぞれの生活が無理なく重なり合うこと。そのために空間は細かく分けすぎず、一様にもならない、緩やかなグラデーションで構成されています。

玄関から続く動線は、シューズクローク、ウォークインクローゼット、洗面を経てリビングへとひと続きに計画に。共働きで忙しい日々の中でも帰宅後の動作が滞らず、身支度や片付けが自然と完結します。

生活感が表に出やすい要素を裏側にまとめることで、家族が集まる空間には穏やかな余白が保たれています。

ダイニングには大判の床タイルを採用し、掃除のしやすさと空間の伸びやかさを両立。一方、リビングは床を一段下げてフローリングとし、素材とレベルの違いによって居場所の性格を切り替えています。

吹き抜けを介して上下階がつながる構成もこの家の特徴です。2階にはライブラリーや個室が配置され、仕事や読書といった集中の時間を受け止めてくれます。

視線や音は完全には遮られず、下階の気配がほどよく伝わり家族が別々のことをしていても、互いの存在を感じられる距離感が保たれているのです。

素材の選び方にもご夫婦それぞれの価値観が反映されています。木と白を基調にシャープさと温かさのバランスを意識した構成は、デザイン性を重視するご主人の感覚と、機能性を大切にする奥様の視点が、空間の随所で静かに重なり合った形です。

この住まいは特別なことをしなくても、日々の暮らしそのものが心地よく整っていく場所。家族それぞれの時間を尊重しながら、ふとした瞬間に同じ空間を共有する──そんな暮らしのリズムを意匠と構成によって丁寧に支えています。

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