プロの住宅レシピ 居場所のグラデーション──動線と意匠が導く家族の住まい
木名瀬 佳世
この住まいで大切にされたのは、家族それぞれの生活が無理なく重なり合うこと。そのために空間は細かく分けすぎず、一様にもならない、緩やかなグラデーションで構成されています。
玄関から続く動線は、シューズクローク、ウォークインクローゼット、洗面を経てリビングへとひと続きに計画に。共働きで忙しい日々の中でも帰宅後の動作が滞らず、身支度や片付けが自然と完結します。
生活感が表に出やすい要素を裏側にまとめることで、家族が集まる空間には穏やかな余白が保たれています。
ダイニングには大判の床タイルを採用し、掃除のしやすさと空間の伸びやかさを両立。一方、リビングは床を一段下げてフローリングとし、素材とレベルの違いによって居場所の性格を切り替えています。
吹き抜けを介して上下階がつながる構成もこの家の特徴です。2階にはライブラリーや個室が配置され、仕事や読書といった集中の時間を受け止めてくれます。
視線や音は完全には遮られず、下階の気配がほどよく伝わり家族が別々のことをしていても、互いの存在を感じられる距離感が保たれているのです。
素材の選び方にもご夫婦それぞれの価値観が反映されています。木と白を基調にシャープさと温かさのバランスを意識した構成は、デザイン性を重視するご主人の感覚と、機能性を大切にする奥様の視点が、空間の随所で静かに重なり合った形です。
この住まいは特別なことをしなくても、日々の暮らしそのものが心地よく整っていく場所。家族それぞれの時間を尊重しながら、ふとした瞬間に同じ空間を共有する──そんな暮らしのリズムを意匠と構成によって丁寧に支えています。