プロの住宅レシピ 空間を重ねて暮らす──段差と吹抜が生む、用途を限定しない住まい

PANDA:株式会社山本浩三建築設計事務所
山本 浩三

床レベルをずらしたリビングは段差そのものが居場所となる構成。ソファに腰掛ける、床に近い視線でくつろぐなど、使い方を限定しない余白が生まれている。敷地の高低差を内部に引き込み、空間の多層化に繋がる。

建物中央に設けられた用途を限定しない「ホール」を起点に、リビングやダイニング、上下階がゆるやかに繋がる。吹抜とスキップフロアによって視線が交差し、家全体を一体の空間として感じられる構成。大きな開口部の

大きな開口部の先に広がるテラスは、外部でありながら室内の延長として計画された空間。高い壁によって視線を遮りつつ反射光を取り込むことで、閉じながらも明るいリビングを成立させている。

テレビを普段は見ないという暮らし方に合わせ、造作の収納扉を設置。取っ手を見せず、ルーバー状の面材によってフラットな壁面として成立させている。住むほどに身体で覚える操作感も計画の一部。

ダイニングはバルコニーに面して配置し、直接的な視線を遮りながらも自然光を室内に導く。壁と天井、床の素材を揃えることで内と外の境界を曖昧にし、空間の広がりを強調している。

この住宅の内部空間を特徴づけているのは、段差や吹抜によって緩やかに分節された構成です。
敷地が道路より約60センチ高いという条件を活かし、床レベルをずらしながら空間を積み重ねることで、限られたボリュームの中に多様な居場所をつくり出しています。

建物の中心には用途を限定しない大きな「ホール」を配置。リビングやダイニング、上下階の動線がこの空間を介して繋がることで、家全体が一体として感じられる構成となっています。

吹抜を通して視線や気配が交差し、家族それぞれが別の場所にいながらも、互いの存在を感じられる距離感がつくられています。

リビングはスキップフロアによって床レベルを下げ、段差そのものを居場所として取り込んでいます。ソファに座る、床に近い視線でくつろぐ、段に腰掛けるなど、使い方を限定しない余白が生まれています。天井高も場所ごとに変化し、空間は広がりながらも、過度に大きく感じさせないバランスが保たれています。

外部との関係も、内部空間の一部として丁寧に設計されています。リビングやダイニングに面したテラスは、高い壁に囲われ、視線を遮りながら反射光を取り込む構成。直接的な開放感ではなく、内と外が連続して感じられる穏やかな明るさが住空間全体を包み込みます。

また、暮らし方に合わせた細やかな編集もこの家の特徴。テレビは普段使わないという価値観から、造作の収納扉によって壁面に溶け込ませています。取っ手を見せないルーバー状の面材は、収納でありながら空間の表情をつくる要素にもなっているのです。

段差、吹抜、テラス、そして可変的なホール。これらを重ね合わせることで、この住宅は一つひとつの行為に最適化された部屋ではなく、生活のシーンに応じて伸縮する空間として成立しています。敷地条件を読み解き、内部に引き込むことで生まれた密度の高い住まいです。

photo:吉村昌也

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