プロの住宅レシピ 生活感を消すディテール──照明と“隠す仕組み”で暮らしを整える
この住まいの内観を支えているのは、派手な演出ではなく「生活のノイズを消す」ための設計。
まず印象に残るのは、空間に余計な情報がほとんど見当たらないことです。お施主さんのご要望から、生活感を消すための細かな選択の積み重ねによって空間の美しさを保っています。
象徴的なのがコンセントや設備の扱いです。家具まわりではコンセントそのものが目に入らないよう蓋付きの器具を採用し、視線に触れる“点”を消しています。
洗面室では、キャビネット内にコンセントを設け、ドライヤーを差しっぱなしにしたままでも外から見えない運用を可能にしています。引き出しを開けた瞬間に必要なものが手元に現れ、閉じれば生活感は消える──日常動作と視覚的な整いを両立させる、実務的な工夫です。
照明計画も同じ意識で組み立てられています。玄関は自動点灯とし、平日の帰宅時間や就寝時間に合わせて消灯するよう設定。季節によって多少の変化はありますが、家族の生活リズムに寄り添い、意識せずに快適さが維持されています。
洗面でも、使う場面でだけ点けたいという要望に対し、器具を見せない位置に間接照明を仕込み、必要な明るさだけを確保しています。光を“足す”というより、視界を乱さずに“整える”設計です。
さらに、住まい手の価値観を反映した「隠す仕掛け」も丁寧に施されています。テレビは普段あまり見ないため、専用の隠し扉を造作して収納。閉じたときにフラットに見える水平の収納金物を用い、引き戸のように納まりが悪くなる方式は避けています。
取っ手を見せたくないというお施主さんのご要望に対しては、面材をルーバー状に見せるデザインで解決しつつ、単なるルーバーでは重くて引けないため、先端にピンポイントの引っ掛かりを設けています。住むうちに身体が覚える操作感を前提にした設計が、機能を目立たせずに成立させているのです。
目に見える美しさは、こうした見えない配慮の積み重ねで支えられています。暮らしを遮らない光、視界から消える配線、価値観に合わせて姿を隠す機器。自己満足でいい、好きなものに囲まれて暮らしたい──そんなご家族の願いは、ディテールの精度として確かに形になっています。
photo:吉村昌也