プロの住宅レシピ 狭小地を立体で読み替える──抽象化されたディテールが導く木造3階建て住宅
敷地面積約52㎡という条件のもと計画された木造3階建ての専用住宅。限られた敷地に求められたのは、単なる床面積の確保ではなく、上下方向を含めた空間の整理と精度の高いディテールでした。
象徴的なのが階段です。蹴上げにはヘリンボーンを採用し、視覚的な特徴を与える一方、手すりはフラットバー12×44のみで構成。固定点は3点に限定しています。構造的合理性と抽象性の均衡点を探った結果の3点固定であり、装飾と抑制の対比を明確にする意図があります。
建具や造作は、スイッチや照明、サッシを除き、すべて設計段階から製図を行っています。既製品を使うと、寸法や納まりの曖昧さが空間全体の精度を下げてしまうためです。
玄関かまちは靴収納という機能を内包しながらも、用途が前面に出ないよう抽象化し、床から天井までの連続性を保っています。扉脇の木装飾も同様に垂れ壁を設けず、装飾性を面として整理しています。
普段は用いないというアーチ形状も、今回は奥様のご要望を受けて採用されました。ただし天井いっぱいまで立ち上げるのではなく、垂れ壁として処理することで、全体の直線的な構成との緊張関係を保っています。
2階のキッチンは食堂から離れたアールの開口の奥に配置。洗濯スペースも併設し、家事機能を一箇所に集約しているのが特徴です。匂いや音、動線の干渉を抑えつつ、生活感が前面に出ない構成です。天井には床と合わせたチーク材を張り、凹凸のある表情が空間に陰影を与えています。
採光と通風もまた、細かな判断の積み重ねによって成立しています。北側道路からの光に加え、緑道に面した側にテラスを設け、中央には吹抜けと高窓を配置。上部の横滑り窓は手動とし、夏場には上昇した熱気を逃がせるよう計画されました。
外観では、縦方向のボリューム操作によって敷地条件に応答しつつ、開口位置を精査してプライバシーと採光を両立。表札やポスト、扉のデザインにはご主人の考案を反映し、街に対する表情も丁寧に整えられています。
一つひとつは小さな選択ですが、その総体が空間の密度をつくります。狭小住宅であるからこそディティールが語る設計の痕跡が、住まい全体の完成度として静かに立ち上がっています。