プロの住宅レシピ 素材を重ね、光を通す──天井と仕上げでつくる空間の質
このアトリエ付き住宅では、空間の印象を決定づける要素として天井や仕上げの扱いが丁寧に設計されています。目立つ素材を使うのではなく、限られたコストの中でどこに操作を加えるか ── その判断の積み重ねが、空間の質を支えています。
主室の上部に設けられたルーバー状の天井は、この住宅を象徴する仕掛けのひとつです。金属製の床材を用い、2階の床として踏むことができる強度を確保しながら、下階へと光を落とす役割を担っています。
梁や階段、天井の一部にはルーバー状の金属色と合わせるように、シルバー塗料が用いられています。無色透明の塗料を塗布した後、拭き取ることで木目を浮かび上がらせる仕上げとし、木の質感を残しながらも金属的な床材と調和させています。
オイルステインのように色を載せるのではなく、素材そのものをなじませるための操作です。シルバーという扱いの難しい色を選びながら、空間全体の統一感を損なわない点に、この住宅の繊細さがあります。
ワークスペースでは、天井高さを3.5m近く確保しつつ、コストを抑える工夫が施されています。使用されているのは吉野石膏のプラスターボード。見えない場所に使われることの多い材料だが、視線が届きにくい高さを活かし、仕上げとして成立させています。ビスが見える仕様でありながら、空間のスケールによって違和感を感じさせません。
さらに2階の天井には、9.5mm厚の化粧プラスターボードを採用。一般的な賃貸ビルの廊下などに使われる材料ですが、今回は900角の正方形タイプを選び、色味も白ではなくわずかに黄色味を含んだものを採用しています。凹凸のある表情が吸音性を高め、安価な素材でありながら落ち着いた印象を生み出しています。
素材の選択や仕上げの方法はコスト削減を目的としながらも、それ自体が空間の質を下げることはありません。むしろ制約の中での判断が、建築としての完成度を引き上げています。派手な素材に頼らず、操作の精度で魅せる ── その姿勢がこの住まいの静かな強さを形づくっています。