プロの住宅レシピ 包まれながら開く ── 外部空間から整えた住まいの輪郭
神奈川県茅ヶ崎市に建つこの家は、賑わいと落ち着きが程よく混ざり合うこの環境を背景に、外部との距離感を丁寧に編み直すような住まいが計画されました。この住まいでは外部とどう向き合うかが設計の起点となっています。
外観の大きな特徴は深く張り出した庇と、その内側に包み込まれるように設けられたバルコニーです。屋根形状に沿って天井面を連続させることで、室内から外へと視線と意識が自然に繋がり、都市に開きながらも守られた居場所が生まれています。
曲線を取り入れたフォルムは、建物全体に柔らかな表情を与えると同時に、街並みとの関係を穏やかに整えています。
南東に配置されたL字型のバルコニーは、周辺の緑や文化施設の気配を取り込みながら、回遊性のある外部空間として計画されています。
視線が上方に抜ける構成とすることで、実際の面積以上の広がりを感じさせ、腰掛けたり植物を並べたりと、多様な過ごし方を受け止める余白となっています。
アウトドアを楽しむ施主のライフスタイルに合わせ、外部シンクや玄関外のシャワーを設けるなど、この住まいならではのこだわりが随所に込められています。
水回りは機能性と心地よさの両立を意識して構成されました。浴室は外部に向けて視線を逃がしながらも、周囲からの見え方には配慮し、安心感のある開放性を確保。
海に近い立地条件を踏まえ、乾燥機を設けるなど日常の使い勝手にも細やかな配慮がなされています。
洗面まわりは既製品をベースにしつつ、収納やカウンターの納まりを工夫することで、造作のような一体感を実現しました。
玄関まわりにはアウトドア用品や自転車を収められる十分な余地を確保し、敷地条件や計画上の制約がある中でも母屋の暮らしが窮屈にならないよう動線と容量が調整されています。
都市に身を置きながら、外の気配を心地よく取り込み、日々の機能を確実に支える。外観と水回りに表れたこれらの工夫は、この住まいが「長く使い続けること」を前提に丁寧に組み立てられていることを静かに物語っています。