プロの住宅レシピ 暮らしの層を編み直す ── 用途の異なる空間を内包した住まい
この住まいの計画を特徴づけているのは、異なる性質の空間を一つの建物の中で自然に共存させている点にあります。
外観、賃貸スペース、家族の玄関、仕事の場、そして子どもたちの居場所。それぞれの役割を明確に分けながらも、建築としての一体感は失われていません。
建物の足元にあたる1階には、独立した賃貸スペースを配置。過度な装飾を避け、長尺シートの床や既製設備を用いることで、メンテナンス性とコストバランスに配慮した構成としています。
限られた面積の中でも、サーフボードを収められる余白を設けるなど、住まい手像を想定した細やかな設計が読み取れます。
一方、母屋の玄関は用途を明確に分け、賃貸部分とは異なるスケール感と素材感で計画されています。木の建具と間接照明により、外部から内部へと気持ちを切り替えるための「間」が丁寧につくられました。
収納量を確保しながらも、視線の抜けや足元の余白によって、閉塞感を感じさせない構成となっています。
ご主人の書斎はリモートワークを前提とした機能的な空間です。複数台のPC使用に対応しつつ、造作の本棚とデスクを組み合わせることで、作業に集中できる環境を整えています。
主寝室や共用部とは距離を保ち、仕事と生活のリズムを切り替えやすい配置とした点も、この住まいの合理性を象徴しています。
子ども部屋は、決して広さに頼らず、個の時間を支える工夫が随所に施されています。作り付けのデスクや収納、本棚の配置を互い違いにすることで、圧迫感を抑えながら学習に集中できる環境を確保しました。
家族のそれぞれのライフステージを見据えた設計が、空間の密度として表れています。
外観から内部までを通して感じられるのは、用途や条件を整理し、優先順位を見誤らない設計の姿勢です。
住むこと、貸すこと、働くこと、育てること。そのすべてを一つの住まいに収めながら、どこにも無理を残さない。この住宅は、都市と自然の距離がほどよい場所での暮らしに向き合った現実的で誠実な佇まいを備えています。