プロの住宅レシピ 賃貸と住まいを重ねて ── 立地と暮らしを活かした都市住宅
駅からほど近く、海や公園、美術館、図書館といった文化施設が生活圏に揃うエリアに建つ賃貸併用住宅。アプローチは、道路から見て左側に賃貸、右側に母屋を配置し、延床約41坪の中に家族の暮らしと将来を見据えた計画がまとめられています。
ご夫婦と子ども2人の4人家族が選んだのは、住まいとしての快適性に加え、賃貸を組み込むことで住宅ローンの負担を軽減する現実的な選択でした。
母屋の中心となるのは3階に設けられたリビング・ダイニング。屋根形状に沿って連続する木天井が空間を包み込み、全体に広がる構成によって視線と動線に抜けを生んでいます。
ダウンライトに頼らず、天井面を照らすアッパー照明を採用することで、夜も柔らかく均質な明るさを確保しています。
キッチンはアイランド型を採用し、回遊性の高いレイアウトに。造作収納を組み合わせることで、設備へのこだわりと軽やかな空間構成を両立しています。家族の気配を感じながら作業ができ、暮らしの中心として自然と人が集まる場所となっています。
リビング・ダイニングの先には、室内の天井ラインをそのまま外へ引き込んだバルコニーが広がります。深い庇が夏の日射や雨風を和らげ、内と外の境界を曖昧にすることで、実際の面積以上の開放感を生み出しています。南東方向に開いたテラスからは、周辺の緑や街の気配がほどよく感じられます。
階段まわりには生まれた小さなこもり空間を計画。収納や動線と兼ねながら、植栽と光によって居場所としての質を高め、住まいに奥行きを与えています。
賃貸併用という制約の中でも暮らしの豊かさを保つ。都市に開きながらも包まれるような安心感を備えたこの住まいは、住む・貸す・楽しむを同時に成立させた、等身大の都市住宅のひとつの答えと言えます。